この年末年始、1年半ぶりに日本へ里帰りした。今回は日本のお正月を楽しみにしての帰国だ。子どもたちは、私の実家のいとこたちといっしょに一日中遊んで、とても楽しい時間をすごすことができた。
今回の日本滞在で我が家の子どもたちが洗礼? を受けたのが「日本のお笑い」。そうとうインパクトがあったらしく、帰国して1週間がすぎても2人で「オッパッピー!」といって踊っている。テレビをつければ、どこでも「お笑い」の人たちが出演し、おかしなことをやっていた。私も正月のお笑い番組をとても楽しみにしていた。しかし、今回笑えない「お笑い」がたくさんあった。不快に思ったのは昔でいう「どっきりカメラ」のような企画、悪くいえばだれかをだましてそれを笑うような番組。もしくは、誰かからかう対象を決め、その人を集中して笑っているというものだ。日本にいたころには、その手の番組を頻繁に見ていたためか、あまり気にならなかったが、久しぶりに見ると、笑いを取ろうとしているところでとても笑えない。「これは子どもたちに見てもらいたくないなぁ」と感じる番組が多かった。
アメリカにも「どっきりカメラ」のような番組も確かにあるし、いわゆる「下品」な番組もたくさんある。しかし、日本と違うのは、そういう番組が子どもの目に触れる機会が非常に少ないという点だ。テレビのチャンネルは200以上あり、「子どもに見せたくない番組」というのは、そういう番組だけを集めたチャンネルで放映されているので、そのチャンネルを選びさえしなければ、見ることはない。逆にどんな時間でも子どもが見るような番組ばかりを放映しているチャンネルもある。日本の民放のようなチャンネルもあり、いろいろな番組が映るチャンネルもあるが、子どもの起きている時間帯に、「不適切」な番組が放映されることはまずない。
販売されているDVDやビデオにも、必ず「PG」「PG13」「R」などのコードがついていて、親が子どもに見せるときの目安になっている。何か不適当かといえば、キスシーン、裸などはもちろん、暴力、血が出ているシーンなどだ。例えば子どももよく見るハリーポッターもシリーズ4番目はPG13になっている。こちらでも人気のあるアニメの「ナルト」や「ポケモン」なども不適切なシーンは書き換えられて放映されていたりする。
始めはアメリカのこのような対応は、ちょっと過剰に反応しすぎだと思っていたが、何年も「不適切」な番組を見ていないと、久しぶりに見る日本の民放番組やコマーシャルなどに顔をしかめてしまった。日本でも「いじめ」が問題にされているのに、どうしてこういう番組が規制されないのだろう。「おもしろかったらいい」というルールは、一部にしか通用しないルールだ。みんなが笑えるネタというものは、そうそうあるものではないし、爆発的に笑えるものではなかったりするとは思う。「毒舌」の毒がなくなったらおもしろくないのは事実だが、今、日本は常に出されている毒に麻痺して中毒状態になっているのではないかと思った。
※MPAA(全米映画協会)レイティングシステムの表示例
「G」General Audiences 誰でも見ることができる
「PG」Parental Guidance Suggested 保護者の付き添いが望ましい
「PG13」Parents strongly cautioned 13歳未満には不適当なシーンが含まれている
「R」Restricted 17歳以下は大人か保護者同伴でなければ見ることを制限される
古川直子(ふるかわ・なおこ)さんのプロフィール
元スポーツニッポン新聞記者。長男が3歳半で渡米。長女を米国で出産。子育て歴は日本より米国のほうが長くなった。甘すぎて食べられなかったケーキと、薄すぎると思ったダンキン・ドーナッツのコーヒーが好物になった。野球はレッドソックス、アメフトはペイトリオッツのファン。すっかりニューイングランドの人間になってきたと思うきょうこのごろ……。
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2008年1月16日