韓国の李明博次期大統領が新年記者会見を行い、二月二十五日の就任に向け外交・安保から経済運営まで新政権のビジョンを包括的に提示した。
昨年十二月、野党ハンナラ党から出馬、圧勝した。経済界出身の初の大統領がどんな政治スタンスをとるのか内外から注目が集まった。選挙戦では、核廃棄を前提に北朝鮮支援を継続する意向を示すにとどめていたが会見では、北朝鮮の金正日総書記の訪韓を要請したり、前政権からの包容政策を修正する考えを示すなど相互主義重視の姿勢をより鮮明にしたといえる。
北朝鮮の金総書記との首脳会談は「核を放棄させるのに役立つなら、いつでも会うことができる」と述べ、核問題を最優先課題として積極的に応じる考えを表明した。その場合「(次は)韓国側で開催するのが望ましい」と相互主義で臨む姿勢を強調した。二〇〇〇年の南北共同宣言に金総書記の訪韓が盛り込まれたが昨年十月、盧武鉉大統領は宣言にこだわらず訪朝した。過去の約束を果たすことが先決だと北朝鮮側に基本原則を伝える狙いがあるようだ。
昨年十月の南北首脳会談で合意された造船団地の建設、鉄道・高速道路の改修などの経済協力事業は「妥当性、財政負担、国民的な合意などの観点から(再検討した上で)進める」と事業見直しの可能性に言及した。金大中政権以来、十年間続いた包容政策を修正し、韓国側の負担を軽減して韓国経済を立て直す意図がうかがえる。
しかし、北朝鮮側がすんなりと了承するかどうか。李氏の公約は「非核・開放3000」だった。北朝鮮が核を放棄するなら大型支援を実施、十年間で北朝鮮の一人当たり国民所得を三千ドルに引き上げるという内容だ。この公約を守る道筋を丁寧に説明する責務があろう。
李氏は米韓や、日韓関係の「復元」も強調してきた。会見では「米韓同盟を未来志向的に確立するため努力する。日本、中国、ロシアも重要だ」とした。米韓関係は南北関係を優先するあまり、おろそかになった面は否めない。再度、米韓同盟を外交の基軸とし南北関係とのバランスを取ることが、外国資本を韓国に呼び込み、経済再生につながると考えているとみられる。
今回、拉致など北朝鮮の人権問題への言及はなかったが日本政府は新政権と連携を強化、解決の糸口を見つける必要がある。首脳が年一回相互訪問する「日韓シャトル外交」も〇五年六月以降、途絶えたままだ。「アジアとの共鳴」を唱える福田康夫首相は再開準備を急ぐべきだ。
高度な専門性が求められる仕事を担う人材の育成を目指す「専門職大学院」で定員割れの多いことが、文部科学省の調査で分かった。
それによると、二〇〇六年四月までに開設された国公私立、株式会社立の専門職大学院四十九校の計六十六専攻(法科大学院を除く)のうち定員を割り込んだのは二十五専攻に及ぶ。
分野別では、ビジネス・技術経営(MOT)が二十八専攻のうち九専攻、会計が十四専攻のうち四専攻、公共政策が七専攻のうち二専攻、知的財産やファッションといった「その他の分野」は十七専攻のうち十専攻に上った。募集人員の半数を下回ったのは七専攻で「その他の分野」が五専攻を占めた。
専門職大学院は、国際的視野を持ち、高度で専門的な職業能力を有する人材の養成という社会ニーズに応えるため中央教育審議会の提言で〇三年度にスタートした。実務経験者を教員として配置することなどが特徴だ。
科学技術の進展や社会・経済・文化のグローバル化、国際競争の激化という状況下で期待が高まり、重要性も増そう。それが約四割もの専攻で定員割れとは残念だ。
大学院側と志望者側の求めるもののずれが何か、十分な検証が必要だ。中には趣旨と異なり、単に資格取得だけを目指すカリキュラムの専門職大学院もあると指摘される。専攻や教育内容を見直し、質を高めなければならない。
企業などの従業員再教育への意識も問われる。大学院に行きやすい環境や高度な専門性を生かす場、処遇など意欲を高める手だてが欠かせない。時代の要請である専門職大学院を、期待倒れに終わらすわけにはいくまい。
(2008年1月16日掲載)