コラム[WSJ] 高いケーブルは音がいい? オーディオマニアに聞かせてみたオーディオマニアは機器のブランドや価格に影響されずに、音の違いを聞き分けられるだろうか?2008年01月16日 17時52分 更新
ニューヨーク(ウォール・ストリート・ジャーナル) 2〜3ドルで問題なく聞こえるスピーカーケーブルと、数千ドルするが、たぶんもうちょっとよく聞こえるケーブルのうち1つを選ばなければならないとしたら――そんな場面で2番目のケーブルを選ぶ人は、先週ラスベガスに行っていたら楽しく過ごせたことだろう。 ラスベガスでは多くのイベントが行われていたが、その1つにHome Entertainment Showがあった。大通りから離れた2件の小さなモーテルで開かれた、オーディオマニア向けトレードショウだ。皆さんご存じだろうが、オーディオマニアはターンテーブルに5万ドルを投じることを何とも思わない熱狂的なHi-Fi愛好家だ。わたしは長年の経験で、オーディオマニアは2種類に分けられることを学んだ。完全に正気を失っている人たちと、単に熱狂的な人たちだ。 後者はユーモアのセンスがあり、オーディオは、お金や豊富なボキャブラリーを持っていて、普通の人には分からない違いが分かる人たちにとって多くの趣味――ワインとか――の1つにすぎないと肩をすくめる。 これに対して、わたしの関心は、信念が知覚にどの程度影響するかにある。科学者は、ワイン愛好家の脳をスキャンして、彼らが高いワインだと思っているときの方が、よりワインを楽しんでいることを発見した。ではオーディオマニアは本当に、機器のブランドや価格に影響されることなく、主張する通りに違いを聞き分けられるだろうか? それを調べるために、(Wall Street Journalの)Portalsは先週、Home Entertainment Showの公式出展者になった。わたしは部屋を1つ用意し、1つの部品以外まったく同じ2つのサウンドシステムを設置した。スピーカー以外はすべてスクリーンの後ろに隠した(Totem AcousticsのForestスピーカーを借り、Magnum DynalabのMD-308アンプを置いた。どれも素晴らしい聞き心地だった)。 両方のシステムで同じ音楽を再生し、参加者はリモコンで2つのシステムを切り替え、どちらの音が良かったかをわたしに伝えた。 テストの1つでは、iPodで再生した高品質MP3ファイルと、3000ドルのプレーヤーで再生したCDを比較した。このテストを受けた24人のうち4分の3がCDの方がいいと答えた。 これは意外な結果ではないが、デジタルだが非圧縮の.wavファイルをiPodで再生した――ヘッドフォンジャックをアンプにつないだ――ときには、21人のうち52%がiPodの方がいいと言った。 うれしい結果だった。気取ったオーディオマニアが「間違った」答えを出したからではなく、人気のある安価な機器からでも素晴らしい音が出せることが示されたからだ。 オーディオマニアの間でも物議を醸しているスピーカーケーブルのテストも行った。ケーブルに数万ドルを投じる人もいれば、金の無駄だと考えている人もいる。 2台の同じCDプレーヤーを使い、2000ドルの8フィート(2.4メートル)のSigma Retro Goldケーブルと、ホームセンターで売っている、親指ほどの太さの14ゲージのMonster Cableをテストした。多くのオーディオマニアは、同じくらい音がいいと答えた。わたしには違いが分からなかったし、ほかに分かる人がいるかどうかちょっと疑わしいと思う。だが、このテストに参加した39人のうち、61%は高価なケーブルの方がいいと言った。 これだけ価格差のある2つの製品の違いとしては、大きな差ではないかもしれない。だが、このトレードショウに参加した知識ある人々――Stereophile Magazineのジョン・アトキンス氏やマイケル・フレマー氏など――がたやすく高価なケーブルを選んだことに、わたしは驚嘆した。 高価なケーブルの音は「より豊か」「より鮮明」「より粘りがある」と表現されていた。言われてみれば、ワインのようだ。 とは言え、絶対的にはこの違いは大きなものではない。アトキンソン氏は、高価なケーブルの方が5%ほど音がいいと推測した。思い出してほしいのだが、オーディオマニアの定義は、音を少しでもよくするために、いかなる重荷も背負い、幾らでも払う人々だ。 Home Entertainment Showの来場者数はがっかりするほど少なかったため、望み通りにテスト参加者を集められなかった。たとえ数をそろえられたとしても、何らかの結論が出ていたかどうかは分からない。こうした「A-B」テストには限界がある。例えば、すぐには分からないかもしれない違いも、長く聞けば分かってくることもある。 懐疑的な向きは、わたしが感傷的でだまされやすくなったと考えるかもしれない。 そういうわけではない。 例えば、電源コンディショナーというオーディオマニア向けの製品カテゴリーが盛況だ。この製品は、電気の供給によるノイズやゆがみ――発生していても気づかないかもしれない問題――を取り除くと言われている。Audienceの2800ドルのAdeptResponse aR6をA-Bテストに使いたいと申し入れたところ、担当者はそれに応じてくれた。 この担当者は3回中2回、自社のコンディショナーを使ったシステムを選んだ――もう1台のシステムはそのままコンセントにつないでいた。 ここで気に留めておいてほしいのだが、上述の「単に熱狂的な」オーディオマニアは、自分たちは自宅のオーディオ設備に6けたの金額をかけているかもしれないが、普通は、よく知らないブランドを売っているようなオーディオショップで1000ドルも使わなくても、素晴らしい音が得られると話している。 ブランドのことは皆さんのお役に立てるほど知らないが、今回のテストは、リッピングは.wavファイルでした方がいいかもしれないということを示唆している。.wavファイルはMP3よりもディスクスペースを取るが、ディスクの価格は下がっているため、膨大なコレクションを持っていても現実的な選択肢と言えるだろう。 ケーブルに関して言えば、いいものは2000ドル弱することもある。わたしならホームセンターのケーブルで満足だが、皆さんは違いが分かる黄金の耳をお持ちかもしれない。「ダーティー・ハリー」のように、「おれはツイてるか?」と自問しなければならない。 さあ、皆さんはどうだろう? 関連記事[Lee Gomes,The Wall Street Journal] この記事はダウ・ジョーンズとの契約の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。 Copyright (C) 2008 Dow Jones & Co. Inc. All rights reserved. |