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赤字地方債:政府の容認方針 地方財政の急激な悪化を露呈

 政府が07年度の地方税収不足対策として赤字地方債の発行を認める方針を固めたことは、景気が冷え込み地方財政が急激に悪化している実態を露呈しただけに、自治体に波紋を広げた。ただ、政府が予算編成の際に策定する地方財政計画の見積もりの甘さを指摘する声が野党から出ることは確実で、通常国会での関連法案の成否は予断を許さない。

 総務省幹部によると、地方税収の大幅な落ち込みが判明したのは昨年12月はじめ。法人事業税や法人住民税などの落ち込みが07年度の当初見積もりより激しく、自治体からの「SOS」が相次いだ。

 通常、こうした税収不足の際は、建設事業に使途を限定する減収補てん債の発行を認め自治体財政を乗り切る。しかし、地方は公共事業をここ数年圧縮している事情もあり、使途を限定しない赤字地方債発行を認める法改正が必要と判断した。

 減収補てん債の特例を認めたのは、戦後ではオイルショック後の1975年度(約3400億円)と不況感が強まった02年度(約1200億円)以来。今回はすでに80自治体、1800億円の発行を想定しており、総額はさらに膨らむ。

 一方、地方の財政格差を是正するため配分される地方交付税も財源不足が生じた。交付税の約3割が原資となる所得税や法人税、消費税などの国税収入が急激に落ち込んだためだ。地方財政計画では、07年度の交付税総額は自治体への配分額で約15兆2000億円だったが、その後、2992億円の財源不足が判明した。政府は一般会計から財源不足を穴埋めする方針だが、これにも法改正が必要となる。

 参院で多数を握る野党の反対で法案が年度内に成立せず、赤字地方債が発行できなくなると、少なくとも宮城、千葉、新潟、兵庫、岡山の5県が赤字に転落すると総務省はみている。増田寛也総務相は15日、法案が成立しない場合「年度明け早々に(一部自治体が)財政破綻(はたん)する」と強い懸念を示したが、地方財政計画の見通し違いをどう野党に説明するかは難題だ。【七井辰男】

 【ことば】減収補てん債 税収が国の見積もりを下回った場合に発行できる地方債。地方財政法で建設事業に限定するよう規定されており、これ以外の目的で発行する場合は法改正が必要。赤字を穴埋めする目的で発行する赤字地方債は、使途に制限はない。この減収補てん債の特例のほか、税収減のため01年度から時限的に導入されている臨時財政対策債も含まれる。

毎日新聞 2008年1月15日 22時26分

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