【リヤド笠原敏彦】ライス米国務長官とサウド・サウジアラビア外相は15日夜、ブッシュ大統領の同国訪問を総括する共同会見をリヤド市内で開いた。核問題を抱えるイランへの圧力強化を求める米国に対し、サウド外相は「イランは重要な隣国だ」と語り、一線を画す姿勢を明確にした。また、両外相はパレスチナ和平をめぐっても溝を残した。
サウド外相はイランについて「我々は何も悪意を抱いていない」と述べ、核問題やテロ支援でイランを「世界の脅威」だと訴える米国との認識のずれを隠そうとしなかった。ただ、ウラン濃縮活動の停止を求める国連安保理決議などの「国際的義務」に応じ、危機をエスカレートさせないよう求めた。
また、パレスチナ和平ではライス長官が「アラブ諸国はイスラエルに(関係改善への)手を差し伸べる努力をすべきだ」と要求。これに対し、サウド外相は「和平案を提示する以外にどのような手を差し伸べることが可能なのか分からない」と反発した。
サウジなどアラブ諸国は、イスラエルの占領地からの完全撤退などを関係改善の前提条件としている。サウド外相は、イスラエルが占領地での入植活動を継続している点に言及し、「和平交渉に真剣なのか疑問を覚える」と語り、米国の仲介で年内の交渉妥結を目指す和平プロセスに懐疑的な見方を示した。
一方で、サウド外相はイラク支援策について「今後数カ月でバグダッドに大使館をオープンする予定だ」と表明。イスラム教シーア派が多数派を握るイラクに対し、スンニ派のサウジは関係強化を避けてきただけに、ライス長官は「前向きな一歩」と歓迎した。
ブッシュ大統領の訪問は、パレスチナ和平への支援取り付けとイラン孤立化策の強化という2大テーマで、アラブ諸国の動向で鍵を握るサウジとの温度差を露呈した形だ。
湾岸4カ国歴訪中、アラブ側の当局者が記者会見して公式に見解を表明したのはサウジが初めて。
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