【ディアボーン(米ミシガン州)小倉孝保】民主党全国大会の候補者指名には結果が反映されなくなった15日のミシガン州予備選挙では、ほとんどの民主党候補は選挙運動をしなかった。デトロイト周辺は世界最大の自動車産業の街。歴代民主党候補を支持してきた労働者の戸惑いは深かった。
同州の民主党は、党中央規則に反して予備選日程を前倒しした罰則として8月の党大会への代議員出席資格をはく奪された。オバマ、エドワーズ両氏は選挙を辞退、候補者として名前を残したクリントン氏でさえほとんど運動をしなかった。
デトロイトから車で約20分のディアボーンは、フォードの「城下町」。自動車産業を支えたアラブ系住民も多く、街にはアラビア語の看板も目立つ。この町のルージュ工場は、かつて10万人が働いたフォード最大の工場だ。今でも約2万人の労働者を抱える。
ここで約30年間、労働運動に携わった労組幹部のロン・ラレさん(60)は「組合員に投票に行くよう指示したが、具体的な選択肢がないから取り組みには力が入らなかった」と語る。電話で投票を呼びかけたが、「ほとんどは投票しなかったと思う」と予測した。
日本メーカーの追い上げに加え、米自動車メーカー自身も、労賃の安いメキシコなどに生産施設を移す傾向が加速している。
かつて28ドルだった同工場の新規雇用者の時給は、現在、14ドルまで下がった。労組には今こそ、労働者の声を政治に反映させるべきだとの認識が強いが、ラレさんは「民主党でさえ、候補者はみんな大金持ち。アメリカには労働者の党がない。それこそが問題だ」と語った。
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