放送内容
めぐみの一歩
ZEROのつぼ
DNAから人類の謎を解明しようという「分子人類学」が大きな成果を上げている。 その一つがミトコンドリアDNAの塩基配列からその変異の型を解析し、古代からの人類の流れを解明しようという試みだ。
ミトコンドリアDNAは核のDNAとは異なり、一つの細胞に多数存在する。また母親から代々同じ配列のミトコンドリアDNAが受け継がれるという性質があるため、 母方の先祖を辿ることができる。
現代日本人のミトコンドリアDNAの配列が詳しく調べられ、その解析が進められている。解析の結果、ミトコンドリアDNAの配列の違いによって、 現代日本人の大半は、主に16のグループに分けられるという。その中には中国北部で生まれ、朝鮮半島を経由して日本に入ってきたと考えられるグループや、 東南アジアから日本に入ってきたと考えられるグループ、また北方から入ってきたと考えられるグループなど、日本に入ってきた経路の解明に役立っている。
またミトコンドリアDNAの解析は、現代人のみならず遺跡から発掘される太古の骨からも可能だ。 こうして縄文人や弥生人という文化的にも大きく異なる人たちを分析した結果、現代日本人はこれら両方の人たちとつながりをもつことがわかってきた。
日本人がどこから来たのか探りながら分子人類学の最新の成果を紹介する。
【出演】
キャスター
安めぐみ
熊倉悟アナウンサー
専門家ゲスト
篠田謙一(国立科学博物館人類研究部研究主幹)
コメンテーター
佐倉統(東京大学大学院情報学環教授)
ヒトのミトコンドリアDNAは、いくつかのタイプに分けることができる。 日本人の大半は16のグループに入るということから、日本人は16人の母を持つともいえる。
ルートをたどれ
現代日本人のミトコンドリアDNAの配列が詳しく調べられ、その解析が進められている。 解析の結果、16のグループが日本に入ってきた経路の解明に役立っている。
人類の旅
20万年前頃、アフリカに現れたと考えられる、「新人」と呼ばれる私たちの直接の祖先にあたる人類。 人類学、考古学とミトコンドリアDNAの研究から、人類がどのように世界に広がったのかが分かりつつある。
古い骨から解き明かせ
ミトコンドリアDNAの解析は、遺跡から発掘される太古の骨からも可能だ。 解析の結果、インカ帝国を担ったのは、B4というグループの人々だということが浮かび上がった。
縄文?弥生?
縄文人や弥生人という文化的にも大きく異なる人たちを分析した結果、 現代日本人はこれら両方の人たちとつながりをもつことがわかってきた。
ヒグマ
北海道のヒグマのミトコンドリアDNAを調べた結果、3つのグループが存在することがわかった。 グループは地域ごとに分布し、違う時代にやってきたと考えられる。メスのクマの縄張りが非常に狭いという生態的な特徴の反映と思われる。
運動や代謝との相関が
調べられている
長距離ランナーのミトコンドリアDNAのタイプを調べた結果、B4cやD4nのタイプが平均と比べて多く見られた。 ミトコンドリアはエネルギーを生み出す器官であるため、運動能力や代謝との相関があるのか注目されている。