内閣情報調査室の外郭団体
巷間言われているとおり、内調は強力な組織ではないけれども、その力を過小評価するのは正しくない。
たしかに本体は小さいけれども、複数の外郭団体があることを忘れている。
その辺の実態が明らかにされたことはほとんどない。
しかし、たとえば、こんな例がある。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/055/0082/05506280082015c.html
<(略)これはもう政府なれ合いのパスポートじゃないですか。承知の上のパスポートでしょう。答弁があったら――反証の責任は政府にあるのです。これはソビエト側が、政府機関の委託を受けたスパイ行為であると断定をした。われわれもその疑いを持っておる。内閣調査室の悪業というものは、われわれは身に直接感じておりますから、そういう疑いを持っておる。
(略)この内河君の目的は社用ではない、自分の観光ですよ。そのときに外貨は幾ら許可いたましたか。世界政経調査会を、薄給過ぎるから生活に耐えないといって退社したということが伝えられておるわけでしょう。その者がこんな架空の会社へつとめておって、そんな金があるはずはないでしょう。会社から出るはずはないし、本人もあるはずはない。外貨は許可したときに幾らの割り当てになっていますか。
(略)そんなことを、あなた世界政経調査会も内閣調査室もこれは委嘱したなんということを言うはずはない。そんなことだけが、何らこのことがスパイ事件でないということの挙証の材料にはなりません。あなた、これはもうすぐ直前まで世界政経調査会、しかもソ連関係専門家じゃないですか。天理大でソビエト語をやって、若造だから目に立たぬだろうということですね。スパイにもいろいろありますよ、これははなはだしく疑わしいですね。>
今だったら即座に「影響要員」に認定されそうな追及振りで、時代の流れを感じるけれども、ともかくそういう活動が行われているのは間違いない。
台湾・国家安全局の劉冠軍が機密資料を暴露した例の事件では、中国担当の内調職員として「川村泰男」という名前が報道された。
http://big5.huaxia.com/zt/2002-08/83616.html
当時、寺澤有氏との取材で、ダメ元で内調に電話を掛けて、川村氏を呼び出そうとしたら、退職して今は世界政経調査会にいると告げられたことがある。
それで世界政経調査会に連絡して、結局、寺澤氏とともに、川村氏と面談することになった・・・。
川村氏は世界政経調査会の職員として、中国社会科学院日本研究所や上海社会科学院を訪問する等々、活発に活動している様子が窺える。川村氏が内調出身者であることを中国側が知らないとはとうてい思えない。
http://www.sass.org.cn/ws.jsp?sortid=1164&artid=6302
http://ijs.cass.cn/new/gzjb-2007.html
ここに川村氏とともに氏名の記載のある西晃弘、麻場隆広、小笠原達氏らもおそらく諜報関係者である。
http://homepage1.nifty.com/APF/sakusaku/1_1.htm
ちなみに、ここに「法務省職員」と記載のある者は全員、公安調査官と見てよい。
http://homepage1.nifty.com/APF/sakusaku/1_1.htm
筆者が知らない名前もあるが、知っている名前もあるので、全員、公安調査官と断定して間違いない。
かくして、公然情報だけからでも芋づる式にいろんなことが分かる。
ところで、古い資料ではあれけれども、内調の予算は10年前でざっと19億円。現在はこれに数億上乗せされている見当だと思う(衛星情報センターを除く)。
ちなみに、公調の予算は150億円。そのうち調査活動費がおよそ20億円。つまり、内調の調査活動費はほぼこれと同等である。
内調は増員されているにしても、その本体は公調の10分の1程度のものだから、いかにこの額が大きいか分かるだろう。
しかも、そのほとんどつまり、12億5千万円は情報調査委託費。つまり、外郭団体への調査委託費である。
こう考えると、内調本体だけを見てその力量を云々することがいかにナンセンスか分かるだろう。
実際、CIAも、日本の情報機関の力量は実態以上に過小評価されている旨、指摘している。
https://www.cia.gov/library/center-for-the-study-of-intelligence/kent-csi/docs/v07i3a01p_0002.htm
しかし、「日本には情報機関がない」「スパイ天国である」という主張は当局者にとっては都合がいい。
なぜなら、さらに組織・予算を増強せよという話になるから。バカだと思わせて相手を油断させたほうが得だから。諸外国に対する巧妙な欺瞞工作になるから。
どういう立場から物を見るにせよ、実態を踏まえない議論には意味がない。
そして、外郭団体の活動内容はほとんど分かっていない。