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法王が大学訪問取りやめ 「科学に敵対的」と教授ら抗議

2008年01月16日10時02分

 バチカンは15日、ローマ法王ベネディクト16世が17日に予定していたローマ大学訪問を「延期する」と発表した。事実上の訪問取りやめとなる。新学年開始のセレモニーで講演することになっていたが、カトリック保守派で知られる法王の訪問計画に一部の教授、学生らが抗議していた。法王訪問が安全問題以外の理由で中止されるのは極めて異例だ。

 バチカンの声明は「ここ数日の出来事を踏まえて延期が適当」とした。

 抗議活動は、物理学部の教授ら67人が「(法王は)科学研究に対して敵対的だ」などとする書簡を学長に送り、講演の中止を求めたのをきっかけに、15日にはこれに呼応した学生が学内で座り込みを開始。法王訪問を批判する横断幕を掲げるなどした。

 法王は枢機卿時代から信仰と家族の価値を強調し、妊娠中絶や同性愛について批判的なことで知られる。一部の学生は訪問当日にも学内でデモなど抗議行動を計画。バチカンの決定には、法王が公の場で抗議にさらされるのを避ける意図もあると見られる。

 イタリアのプロディ首相は「いかなる声も沈黙させられることがあってはならない」と法王の講演は予定通り行われるべきだとの考えを示した。

 教授らの書簡は、法王が枢機卿時代、講演で17世紀に地動説のガリレオ・ガリレイを断罪した宗教裁判を正当化したと批判。しかし、発言部分は他の哲学者の引用部分で、法王は「信仰は合理性を拒否するのではなく、それを認めることから始まるべきだ」と結論づけていたとの指摘もある。ガリレオ裁判については92年、前法王のヨハネ・パウロ2世が謝罪している。

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