◎北陸の08年春闘 正規雇用者を増やす努力も
これから本格化する二〇〇八年春闘で、北陸の企業に求めたいのは、賃上げもさること
ながら、パートタイムやアルバイトではなく、正社員を増やしていく努力である。特に業績好調な企業は、利益を地域社会に還元し、個人消費を支えていく社会的使命を果たす意味でも、正規雇用者の拡充に力を入れてほしい。
正社員を増やすと、人件費はかさむが、企業部門から家計部門に移るお金を増やしてい
かないと、個人消費は盛り上がらず、いつまでたっても景気が浮上しない。少子化にも歯止めが掛からないだろう。
製造業のなかには団塊世代の大量退職と、高卒就業者の減少などで、人手不足の悩みを
抱えるところも出てきている。特に北陸は有効求人倍率が全国より高く、人材確保は難しいという。企業が派遣労働者や外国人労働者に頼らざるを得ない一面があるのは理解できるが、企業の中核技術を受け継ぎ、発展させていくのはやはり正社員の役目である。特に若い労働者を「使い捨て」にするような雇用形態は見直されるべきであり、将来に希望の持てる職場を提供してほしい。全労働者の三分の一を占めるまでになった非正規雇用者の割合を、少しずつでも減らしていくことが地域社会の発展にもつながると思うのである。
北陸経済をけん引する製造業は、一部の大企業を除いて、危険・きつい・汚いという3
Kのイメージからなかなか抜け出せない。額に汗して働くことを嫌がる労働者の側にも問題はあるのだろう。石川県内では労働力不足を理由に新工場の建設を見送った企業も出てきており、製造業での人手不足はますます深刻化していくとみられる。人材への投資を惜しまず、派遣労働者やパート・アルバイトのなかから、これはと思う人材を発掘し、積極的に正社員に登用してほしい。
〇七年度版「労働経済白書」によると、パート・アルバイトの年収は半数以上が百五十
万円未満、派遣や契約・嘱託社員は約三割が二百万円―三百万円にとどまっている。非正規雇用者の多くは、正社員の六―七割程度の人件費で雇われているというデータもある。いわゆるネットカフェ難民を生み出すような雇用形態を徐々に解消させていきたい。
◎変わる対北外交 日米韓の結束につなげたい
核兵器を放棄しない限り北朝鮮への大規模な援助は難しいというのが韓国次期大統領の
李明博氏の立場とされる。まさにその通りで、来月の大統領就任を控えた新年の記者会見で北朝鮮に核の放棄を迫る姿勢を明らかにし、米韓同盟の強化に取り組む考えを明らかにした。日米韓の結束につなげたい変化である。北朝鮮が変わらなければ変化の起こしようがないとのシニカルな見方もあるが、北朝鮮を変えるためにはこっちが変わらねばなるまい。
金大中前大統領から現大統領の盧武鉉氏に続く期間を“文化大革命の十年”と皮肉る識
者がいるように、左派が政権を牛耳り、ずるずると北朝鮮に一方的に引き回され、経済援助を続けた期間だった。その典型の一つが昨年十月の南北会談で合意した経済協力だが、李氏はこの合意の履行を、事業の正当性や財政負担、国民的な合意などを考慮して見直すことを示唆した。こうした軌道修正は、核兵器の全面的な放棄と引き替えに金正日体制の存続を保証する方向へ舵(かじ)を切った米国のアプローチと一致する。
米韓同盟の強化の必要について、李氏はこれまで南北関係を優先するあまり「米韓関係
がおろそかになった面もある」と率直に指摘した。それは米朝関係の発展にもつながるとし、北朝鮮が六カ国協議の合意事項を誠実に実行すれば「本格的な南北協力の時代を早めることができる」との考えを表明した。北朝鮮の金正日総書記との首脳会談について「核を放棄させるのに役立つなら、いつでも会うことができる」としたが、韓国側が出掛けるのではなく、金総書記の訪韓を促したのである。
ただ、日朝関係で重要な懸案となっている北朝鮮による日本人拉致問題についてはまっ
たく触れなかった。日本にはこの点が物足りない。
問題の難しさ、微妙さを意識したためとも考えられるが、李氏には北朝鮮の人権状況の
改善を求めた発言があり、韓国にも拉致問題があるわけだから、北朝鮮の人権状況と拉致問題は根本でつながっているとの認識の表明を期待する。李氏が描く対北外交のシナリオには日本の援助も当てにされているといわれるから、なおさらだ。