この連休、自宅のテレビ前に陣取り久しぶりに大相撲の初場所を観戦した人も多かったろう。
三連覇を目指す白鵬は白星を重ねたが、出場停止処分明けの朝青龍は昨日、いまひとつ調子が出ないのか、平幕稀勢の里に送り倒され負けてしまった。両国国技館にどよめきがわいた。
言うまでもないが相撲の勝負は一瞬でつく。いつ来るか分からぬその瞬間を見逃さぬよう集中する行司。十三歳で入門し五十二年間、二〇〇七年の春場所を最後に引退した三十三代木村庄之助(本名・野澤要一さん)が自著「力士の世界」に厳しい勝負の世界を紹介している。
相撲協会の審判規則では行司はどんな場合も東西のいずれかに軍配を上げなければならないと決められている。見極められなかったといって軍配を真上に上げるわけにはいかないのだ。とにかく勝負の見やすい位置を確保することが大事だという。
差し違えをしないために求められる態度は「(軍配は)負けを見て、勝ちに上げよ」だそうだ。要するに素直に取組を見る力が必要なのだ。「もうすぐ東方が勝つな」といった先入観は目を曇らせてしまう。
今日、与野党が激突した「ねじれ国会」が閉幕。続いて三月末を一つのヤマ場に解散・総選挙含みの緊迫した通常国会が始まる。物事をありのままに見て軍配を上げる行司並みの冷静さが有権者に求められている。