2008年1月15日 [火]
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命の重さ考えて 飲酒運転、いじめの遺族訴え

教育

命の重さ考えて 飲酒運転、いじめの遺族訴え

自身の体験を語りながら命の大切さを問い掛ける(左から)小森美登里さん、新一郎さん、井上保孝さん、郁美さん=那覇市の沖縄大学

 飲酒運転やいじめでわが子を失ったことをきっかけに、全国各地を訪れ、命の大切さを訴えている井上保孝さん・郁美さん夫妻(千葉県)と小森新一郎さん・美登里さん夫妻(神奈川県)を招いた学習会「こどものいのちを守るために〜地域と大人ができること」が13日、那覇市の沖縄大学で開かれた。最愛の子を失うというつらい体験と向き合いながら、「自分たちのような思いは二度と誰にもしてほしくない」と語る夫妻は「命の重さについて一人一人が考えてほしい」と呼び掛けた。
 学習会は、沖縄大学の「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」事業の一環。
 井上さん夫妻は1999年、東名高速道路で飲酒運転のトラックに追突され車が炎上し、同乗していた当時3歳と一歳の娘を失った。その後、悪質交通事犯の量刑見直しなどを訴えて、全国の交通事故遺族らとともに署名運動を展開、飲酒運転撲滅を訴え活動を続けている。
 郁美さんは、娘が着けていたチャイルドシートの留め金がはまったままの状態で焼け跡から出てきたことを振り返り「娘たちには、安全のルールや約束を口酸っぱくして教えてきたが、プロのドライバーであるはずのトラックの運転手がそれを守っていなかった」と悔しさをにじませた。
 保孝さんも「何の罪もない子がルールを守らない大人の犠牲になって未来を断ち切られる世の中は、大人が変えていかなければならない」と訴えた。
 小森夫妻は1998年に当時高校1年生だった一人娘をいじめによる自殺で亡くした。娘の残したメッセージを伝えるためにNPO「ジェントルハート・プロジェクト」を設立し、全国の学校で講演している。
 新一郎さんはいじめについて「学校や教育委員会の8、9割は隠ぺいする。隠ぺいがある以上いじめという負の連鎖は止まらない」と指摘した。「最大の抑止力は、親と学校、地域が情報を共有することだ」と強調した。また「戦後の日本は成長と効率化ばかり優先し、心に対して目が向いてなかった。目先の利害で大人が動き、子どもをマーケットの一分野として見ていては、本当の子の幸せはない」と訴えた。
 美登里さんは「子の思いを無視し、押しつけるかかわりは子の心を閉ざし、いじめは解決できない」と指摘し「命や心について、一緒に考え答えにたどり着くことが大切だ」と語った。また「自分さえ良ければ」という自己中心的な大人の姿勢が、交通犯罪や子のいじめを生み出していると指摘し、大人自らが変わっていく必要性を訴えた。
 学習会に参加していた伊波秀輝さんは「想像できない、人を思いやる気持ちが欠けている社会を感じた。一人一人が相手の立場に立って物事を考えていくことが大切だと思った」と話していた。

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