勤務医が中心となる新たな医師団体「全国医師連盟」(仮)の設立準備委員会(黒川衛・代表世話人)は13日、東京都内で総決起集会を開いた。開業医中心の医師会とは異なる立場から、労働組合の創設やメディア・市民に向けた情報発信などの活動を行い、“医療崩壊”の阻止を目指す。
「医師会と対立するわけではない」 全国医師連盟活動の柱は、(1)医師労働環境の改善(2)公正な医療報道と世論啓発(3)医療紛争解決と医師の自浄機能の促進――の3点。 医師が個人加盟できる労働組合(ドクターズユニオン)の創設や、行政対策、記者や患者向けに分かりにくい病名や症状などを無料で解説するサービス、医療過誤の冤罪や報道被害を受けた医師への支援活動などを行っていく。 準備委員会は昨年発足。SNSなどおもにインターネットを使って準備を進め、13日現在までに420人が会員登録を表明している。開業医は15%程度と、勤務医や研究医が中心なため、平均年齢も43歳程度と若い。今後、夏ごろまでの本発足に向けて準備を進めていく。 会見で全国医師連盟の設立について説明する黒川代表世話人(左)=13日午後6時、東京ビッグサイト(撮影:軸丸靖子) 医師を代表する団体といえば、日本医師会を頂点とする強大な医師会組織がすでにある。しかし、医師会での勤務医の発言権は開業医より低く、病院医師の悲鳴が十分取り上げられてきたとは言えなかった。 このため、全国医師連盟は医師会の対抗軸のように思われがちが、黒川氏はケースバイケース、とし、 「開業医もかつてはわれわれと同じ勤務医や研究医。(医師団体の)先輩として見習うべきものは見習う。医師会と対立する見解も部分的にはあるが、全面対立するものではない」 と話した。 「現場の真実」伝えなければ 約110人が集まった総決起集会では、済生会栗橋病院の本田宏副院長が「誰が日本の医療を殺すのか、日本の医療をどう救う?!」と題し講演した。 テレビや雑誌、ブログなどで国の医療費削減策に警鐘を鳴らし続ける本田氏は、大学教授でも医師不足の現状を知らないこと、医師会が支援する議員でも日本の医療費が安いことを知らないことなどを紹介。 ・GDPに占める日本の医療費(8.0%、2004年)はOECD加盟国平均に満たず、かつG7で最低 ・人口10万人あたりの医師数は全国平均で206人で、もっとも医師が多い東京や京都でも、OECD加盟国平均の290人に及ばない ・厚生労働省は、医師数は不足ではなく偏在が問題としているが、日本の医師数は26万人で、OECD平均並みにするには16万人足りない。その26万人には65歳以上の医師が4万人含まれており、80代、90代もいる。 ・医師が高齢になっても働く理由には、病院が必要医師数を満たせないため在籍を頼むこと、医師側も勤務医時代の給与が安く退職金が少ないため働かざるを得ないという事情がある などのデータを示しながら、 「患者さんと医療関係者のあいだには深い溝がある。解決には『現場の真実』が不可欠。医師自ら立ち上がって、伝えなければならない」 と訴えた。
総合1点(計1人)
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