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2008年1月15日

 太平洋戦争時の鈴木貫太郎首相に、世界各国で反響を呼んだ有名なエピソードがある

首相就任の五日後、米国のフランクリン・ルーズベルト大統領が死去した。当時の鈴木首相は、ルーズベルトの功績を認め、「深い哀悼の意を米国民に送る」との弔意を表明した。ドイツのヒトラーがののしりの言葉を浴びせたのとは対照的だった

この鈴木元首相の弔意に対し、スイスの新聞は「日本武士道精神の発露」と社説で賛辞を発表。米国亡命中の作家トーマス・マンもドイツ国民向けの放送で「日本には、騎士道精神と人間の品位に対する感覚が存在する」と称賛したという(阿川弘之「大人の見識」新潮社)

品格、品位がもてはやされている。裏を返せば、日本人が持っていた美学であるはずの、徳性の高さが失われているということか。鈴木元首相のエピソードは、かつて日本人には世界から認められた高い品位があったということだろう

若者の中には、虚勢を張って騒ぎ立てることを格好いいと思い違いする人もいるようだ。今年は静かに終えた成人式。二十歳になった平成の品格は、成人の品質向上から、とならないように。


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