元日、京都・清水寺の森清範貫主から年賀状をいただきました。昨年末は、食品をめぐる偽装などの不祥事が相次いだ二〇〇七年の世相「偽」の漢字を揮ごうし、「嘆かわしい社会だ」とコメントされていました。
先般、大阪の記者クラブなどで発表された大手企業社長の〇八年年頭訓示も「偽」を反映。利益を追求するあまり、老舗でさえ一瞬にして失ってしまう「信頼」の大切さを説いた内容が目につきました。ある企業の不祥事を調査した外部機関の報告書は、企業の社会的責任の重要性をあらためて説き、企業文化と意識の改革を訴えていました。
深刻な「偽」の世相ですが、もっと心配なのが、子どもたちの間にはびこっている“ネットいじめ”。「学校裏サイト」と呼ばれるネット掲示板に実名で「死ね」「ウザい」といった雑言を書き込む集中攻撃、発信者が分からないようにした中傷のメールを携帯電話に送り続ける…など、陰湿な手段。漢字で表せば「匿」の世相でしょうか。
私の親族でも携帯メールのいじめに遭ったという子どもの話を聞きました。子どもたちの間に、もう一つの暗い社会がまん延している状況は、われわれ大人にとって無関心ではいられません。
さまざまな社会のひずみに“言葉の断絶”が言われています。ネットは便利な道具ですが、やはり人間同士、顔を突き合わせての意思疎通が根底にあってこそ。私自身も公私ともに、“言葉のキャッチボール”というコミュニケーションの原点を大事にしなければと、肝に銘じているところです。(大阪支社・大本哲弥)