18日召集の通常国会の焦点となる道路特定財源の行方に地方自治体が気をもんでいる。3月末が期限切れの揮発油税などの暫定税率の維持を目指す政府・与党と、廃止を主張する民主党など。仮に何の手だてもなく期限切れになると、地方は道路整備費としてあてにしている財源に9000億円もの穴が開きかねない。多くの地方議会が維持を求める意見書を採択。与野党攻防は自治体を巻き込んで激しさを増しそうだ。
「福祉や教育など他の行政を縮減しなければならない。道路整備だけでなく、全体に影響が出る」
総務省の滝野欣弥事務次官は10日の記者会見で、暫定税率廃止に強い懸念を表明した。
地方の道路特定財源は2兆677億円で、うち9064億円が暫定税率分。期限切れになれば、地方は減額の補正予算を組まなければならなくなる。
総務省も新年度予算案で東京都などからの地方法人税を地方に再配分、4000億円分の地方交付税特別枠を確保したばかりで、期限切れはせっかくの格差是正策さえ水泡に帰しかねない。月内に自治体の財政課長などを集めた会議を開き、注意を促す方針だ。
与党は新テロ対策特別措置法に続き、衆院の3分の2以上の賛成による再可決を視野に入れながらも、話し合いの中で維持に持ち込むことを模索している。「廃止は地方経済や住民生活に悪影響を与える」と訴え、地方の不安を「追い風」にする方針だ。
これに対し、民主党は「ガソリン価格が約25円下がる」をうたい文句に、福田康夫首相の問責決議案の参院提出を背景に徹底抗戦する構え。税制改革大綱で、国直轄事業の義務的な地方負担金を1兆円減額、地方が道路整備を含めて自由に使える交付金に振り替えることで「地方の道路整備は従来水準を維持する」と明記。この考え方を浸透させ、地方の不安に応えていきたい考えだ。
共産、社民両党も歩調を合わせる方向だ。ただ、小沢一郎民主党代表の地元・岩手を含む32県議会が維持するよう決議している事実は重い。今後は政府・与党と民主党のどちらの主張が国民に受け入れられるかを競うことになる。【七井辰男、須藤孝】
毎日新聞 2008年1月14日 21時58分 (最終更新時間 1月14日 22時56分)