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【暮らし】

美しく省エネ 広がる『壁面緑化』

2008年1月14日

張ったワイヤにつる性植物をはわせ、壁面を緑化した東急病院=東京都大田区で

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 植物で直射日光を遮り建物の暑さ対策とする「壁面緑化」が広がりつつある。省エネが期待でき、見た目も美しい。緑化ビル登場の動きや、家庭でできる“緑のカーテン”づくりをまとめた。  (草間俊介)

 昨年十一月開業の「東急病院」(東京都大田区)は五階建てビルの壁面の大部分約二千五百三十平方メートルをテイカカズラ、ハゴロモジャスミンなどのつる性植物で覆った。縦横に張り巡らせたワイヤに植物がからまる。

 「エコ効果に加えて近隣住民の声を取り入れ景観も重視し、緑化を決定した」(広報担当者)。冬の今は葉に勢いはないものの、利用者から「環境にやさしそう」「落ち着いて見える」と評判はいいという。

 屋上緑化は知られているが最近、壁面緑化のビルを都内でよく見るようになった。その主な理由は、東京都が二〇〇一年、千平方メートル以上の敷地への新築建物に「屋上または壁面」に、屋上面積に対し20%以上の緑化を条例で義務づけたためだ。これに地球温暖化への関心の高まりが拍車をかけた。

 屋上、壁面緑化の省エネ効果はある。都農林総合研究センターが三棟のログハウスにそれぞれ(1)緑化なし(2)屋根だけ緑化(3)屋根、壁とも緑化−と緑化条件を変え、「最高気温三五度の晴天」で「エアコンで室温二五度を維持」で消費電力を比較した。(1)はエアコンがフル回転しても二五度に下がらなかったが(2)と(3)の消費電力は(1)を100とすると、(2)は87、(3)は68と節電効果が表れた。特に屋根と壁を緑化した(3)は大きな効果があった。

 壁面緑化はコスト面でもメリットがある。都環境局計画調整課によると、既存ビルの屋上緑化の場合、芝生でも一平方メートルあたり二十−三十キロの土壌が必要とされ相当な荷重になる。厳重な防水対策も必要だ。

 これに対し、壁面緑化は屋上緑化よりは簡単だ。地面やプランターからネットなどを張り、つる性の植物をはわせれば(ネット登はん式)、三、四階まで緑のカーテンができる=図。

 例えば「新宿都税事務所」の壁面(高さ約十五メートル、面積約百七十平方メートル)を昨年、ノウゼンカズラなどで緑化したが、大型プランター、支柱、自動注水装置などで工事費は一平方メートル当たり約三万一千円。全体の年間管理費は約二十万円に抑えられた。「費用は(屋上緑化に比べ)かなり安い」(同課)

 家庭や商店ではもっと気軽にできる。同局の担当者は「夏は日光を遮り、寒い冬は枯れて日光を室内に取り入れるため、一戸建てやマンションでは葉の大きさ、伸びる高さからヘチマ、ゴーヤーが一番のお薦め」と話す。アサガオ、キュウリなどもよい。また、西日が気になるのなら、西側は冬でも枯れないヘデラが最適という。

 こうした緑のカーテンは各地で推奨されている。東京都板橋区のエコ活動を推進する「区立エコポリスセンター」によると、同区の緑のカーテンは学校から始まった。ヘチマ、ゴーヤーなどを植えたところ、校舎の三、四階まで伸び、効果が実証された。商店街や企業、個人宅へと広がり、昨年は緑のカーテンのコンテストが開催された。杉並区や愛知県安城市なども積極的だ。自治体によっては助成制度がある。

 同センターの遠藤宏さんは「夏に間に合わせるには今のうちに計画を立て、遅くとも四月中に種まきが必要。ホームセンターなどで農業用ネットが売られていて利用しやすい。ネットは安全のためにしっかり取り付けて」とアドバイスする。

 

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