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八丈島の博物展示施設で飼育されている「キョン」(八丈ビジターセンター提供)
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千葉県の房総半島で、外来動物の小型シカ「キョン」が激増し、農作物に被害が出ている。同県勝浦市にあったレジャー施設「行川アイランド」(01年閉園)で飼育されていたものが逃げ出し、野生化したとみられ、生態系への影響も懸念されている。県では棲息調査を続けており、完全排除に向けた計画を今春以降に作成する方向だ。
ニホンジカの半分ほどの大きさでかわいらしい外見のキョンだが、とんだ困り者になっている。主に広葉樹の葉やイネ科の野草を食べるが、畑にも侵入してトウモロコシ、イチゴ、キュウリなどの農作物も食い荒らしている。
勝浦市の70代の女性は「トマトが全部なくなっていた。植えたってキョンに食べられてしまうからもう植えないよ!」と恨み節。鴨川市農林水産課は「今後、着実に頭数が増えて、被害が多くなると思う」と畑への被害が広がることを懸念している。
中国東南部と台湾に主に棲息し、日本では本来、野生としていないはずの外来動物。千葉県では唯一飼育していた「行川アイランド」から逃げ出したものが勢力を拡大していったとみられる。強い繁殖力が特徴で、07年3月末時点の千葉県内の推定棲息数は約3400頭。01〜02年の調査では約1000頭で、約5年で3・4倍に増えた。これまでに、千葉県の房総半島中部から南部の鴨川市など9市町で棲息が確認された。
キョンは小型シカだが、ニホンジカが本来食べない植物も食べるとされ、生態系への影響が心配されており、05年に環境省が特定外来生物に指定した。千葉県立中央博物館は「外来種である以上、共存という考え方は基本的にはない。昔からの自然が、人間がよそから持ってきた動物で変えられてしまう」。千葉県自然保護課も「このペースで増えていったら、大変なことになる」としており、県は昨年12月に計画を話し合うなど、完全排除に向けた方向で動いている。今年秋をめどに計画を作成する予定だ。
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