◎成人の日に モンスターは恥ずかしい
きょう十四日は成人の日、石川県では今年、約一万三千人の若者が大人の仲間入りを果
たす。一昨年、小松市の成人式会場で女性の晴れ着や髪につばを吐きかけた男性が逮捕されるなど、ここ数年、「荒れる成人式」がメディアをにぎわせているが、今年もまたどこかの会場で、そんな若者の悪ふざけが話題になってしまうのだろうか。
学校現場で無理難題をふっかける親を「モンスターペアレント」と言う。成人式で暴れ
る若者もまた「怪物」と言えよう。若者たちには、成人の日を迎えたのを機に、他人から「怪物」と見なされるのは恥ずかしいことであるという意識を持ってもらいたいし、そう教育していきたいものだ。
若者の多くは、この人生の節目を祝い、友との再会を喜び、決意も新たに大人としてス
タートを切りたいという気持ちで、成人式に臨んでいるだろう。仮に、そんな空気を読めず、会場で大騒ぎして場を乱し、他人に迷惑を掛ける「怪物」がいたとしても、その愚行を冷静にたしなめ、反面教師としてほしい。
成人式を取り仕切る行政、地域関係者らも、そんなおかしな若者を見掛けても制しよう
としないのは、責任放棄に等しい。公の席で常識外れの振る舞いをすれば、周囲からどのような目で見られるのかということを当の本人に気付かせ、自覚と反省を促すためにも、毅然と対処してもらいたい。
残念ながら、現在の日本社会のあらゆる場所に「怪物」がはびこっている。学校につい
て言えば、親だけではなく教師の中にも「怪物」はいる。医療の世界でも、非常識な患者による医師や看護師らへの院内暴力が深刻化する一方で、医療費支払いをめぐるトラブルが原因で病院が患者を公園に放置するというあきれた「事件」も起きている。企業にも、スポーツ界にも、と例を挙げていけばきりがないくらいである。
若者たちも、これから活躍の場がさらに広がれば、いやというほどそうした「怪物」に
出会うだろう。ひるんで迎合したり、黙認してしまう大人が増えれば、そんな輩をますます増長させることになる。身勝手な行為を許さぬ決意を「二十歳の誓い」にしてほしい。
◎白峰を伝建地区に まず住民が本気になって
白山市は、同市白峰地区の歴史的景観について、国の重要伝統的建造物群保存地区(伝
建地区)選定をめざす第一歩として、文化庁に保存対策調査の実施を申請する。伝建地区指定までは長い道のりとなろうが、白山のおひざ元の歴史的価値を高めるために、まずは住民が本気になって取り組んでもらいたい。
白峰地区は、豪雪地帯特有の大壁造りをはじめ、二階から出入りできる構造の民家など
、白山を境にして接する白川郷や五箇山の合掌造りとは異なる堅ろうな建築様式が伝わる。現在八十件選定されている国伝建地区のうち「山村集落」は七件あるが、昨年末に白峰を訪れた文化庁の調査官も、全国的に類例のない建物が多いことを確認している。保存対策調査が正式に決まれば、新年度から二年間にわたって実施され、独特の山村建築の景観として評価が高まることが期待できよう。
こうした評価を定着させるためにも、現存する貴重な古民家を生活や活動の場として生
かしながら保存することが求められる。昨年、県内の大学などでつくる大学コンソーシアム石川などが、白峰の旧加藤家を再生して学生や住民らの多目的な活動拠点となる「雪だるまカフェ」をオープンさせたが、過疎化が進む地元にとっても、古民家が若い世代に活用されることは心強い。
また、欧米を中心に広がっている「世界で最も美しい村」連合への加盟に向けて、県や
同コンソーシアムが後押しする動きもある。自然景観に配慮した村づくりや地域固有の生活様式を守ることが求められるが、独特の畑作の伝統も残る白峰地区は、そんな条件に合致しよう。
このように学術機関が先導する形で、白峰に国内外の「ミニ世界遺産」的価値を付与す
る取り組みが進んできているが、やはり地元全体として保存活用に本腰を入れなければ、歴史的建造物の街としての価値は点から面に広がらないだろう。
白川郷を例に取れば、過疎脱却に向け、地元が一九七一年に「愛する会」をつくり保存
活動に乗り出し、国伝建地区に選定されたことが世界遺産登録に向けた第一歩だった。白峰も地元が起点となり、地道に、着実に、価値に磨きをかけていきたい。