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【国際】

格差拡大の不満吸収 台湾立法委選 野党が圧勝

2008年1月13日 07時12分

12日夜、台北市内の国民党本部で、記者会見を終え党関係者と握手を交わす馬英九氏(左)=共同

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 【台北=野崎雅敏】十二日に投開票された台湾の立法委員選挙で、有権者は「台湾」の危機を訴えた与党民進党より、暮らしや経済危機を訴えた野党国民党を選んだ。自らを「台湾人」と考える人が六割を超えた台湾で、親中国とされる国民党が圧勝した背景には、民主化が進む中で格差が拡大するなど、生活に根ざした強い不満が有権者にあったとみられる。

 台湾の二〇〇六年の経済成長率は4・89%、〇七年は5・46%に達する。失業率もここ数年は低下傾向にあり、〇七年一−十一月の平均では3・92%だ。

 しかし、市民の実感は異なる。台湾紙・聯合報が昨年末に実施した世論調査では、83%が「不景気」と答え、貧富の格差が広がったと感じる人は九割近くに上った。〇七年の消費者物価指数は前年比1・8%上昇するなど、物価高も家計を直撃している。

 国民党側はこうした有権者の心理を突いた。三月の総統選候補となる馬英九氏は、総統に就任すれば▽中国と統一問題を話し合わない▽台湾独立を支持しない▽中国側が武力で台湾問題を処理することに反対する−とし、対中政策を「経済・貿易関係の正常化協議から始める」と述べた。そのうえで「大陸観光客の受け入れ開放は、年間六百億台湾元(約二千百億円)のビジネスチャンスと四万人分の就業機会を生む」とアピールした。

 大陸で働く台湾人ビジネスマンが家族も含め約百万人とされ、〇七年の貿易統計では輸出先の四割を中国が占め、増加率は前年比12%といった現実を踏まえると、その主張には説得力がある。

 また民進党政権下での憲法改正で、今回から定数が半減し、小選挙区比例代表並立制が導入され、一党が圧勝しやすい小選挙区の特徴も表れた。

 民進党側は、党主席を兼任する陳水扁総統が前面に出て「台湾の主体性」を訴え「国民党が勝つことは中国が勝つこと」などと強調したが、「失政」を突く国民党に対して、八年近い政権党としての実績を有権者に十分に伝えられなかった。

(東京新聞)

 

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