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大証のFX市場開設、個人の取引拡大背景

上場商品多様化図る

 大阪証券取引所が「外国為替証拠金取引」(FX取引)の市場を年内に開設する方向で検討に入った背景には、個人投資家によるFX取引が急拡大していることがある。個人投資家の保護のため、取引の透明性や安全性が高い公設市場の充実を求める声は強いが、現在は東京金融取引所が2005年に開設した「くりっく365」しかない。大証も株式関連以外の上場商品を充実させ、取引所間の競争に備える狙いがある。

(白櫨正一)

 少額の証拠金を担保に、多額の外貨取引で差益を狙うFX取引は、為替相場の変動によっては証拠金の数十倍の損失を被る危険もあるハイリスク・ハイリターンの商品だ。だが超低金利が続く中で、数万円の証拠金で取引が始められることや、インターネットを通じて24時間売買できる手軽さもあって、主婦や学生などを含め、FX取引を始める個人投資家が増えている。

 FX取引の多くは、専門業者や証券会社が投資家の注文に応じて金融機関などと相対で外貨取引を行う店頭取引だ。民間調査会社の矢野経済研究所によると、店頭取引の市場規模を証拠金残高で見ると、2007年3月末で前年同期比62・2%増の6133億円で、08年3月末には8314億円に達する見通しで、取引口座数も100万口座を超える勢いだ。

 一方でFX取引を巡るトラブルも増えている。05年以降、20社を超すFX業者が経営破たんし、負債総額は200億円を超えると見られる。破たんした業者の管理がずさんで、投資家が預けた証拠金の大半が返済不能の状態だ。大証は証拠金を管理し、取り次ぎ業者が破たんしても投資家に証拠金が戻らないといったトラブルを避ける。

 また、FX取引で利益を得た主婦や元小学校校長らによる1億円を超える多額の脱税事件が相次いで発覚したが、取引所を通じた取引では、業者が投資家の取引状況を税務署に報告する義務があるため、脱税を防ぐ効果も期待できる。

 昨年9月末に金融商品取引法が施行され、証券取引所で外貨や金利といった商品の上場が可能になった。大証は投資家の注文を取り次ぐ証券会社の要請もあり、初めて為替取引の市場を開設する判断をした模様だ。

 大証は、昨年8月にロンドンの金価格に連動する上場投資信託(ETF)を上場させ、事実上、商品取引の分野にも参入した。株式関連以外の商品を充実させ、総合的な取引所を目指すのは、「上場商品の多様化を図らないと取引所の魅力は薄れるばかりだ」(大証幹部)との強い危機感がある。

外国為替証拠金取引

 投資家が取引業者に預けた「証拠金」を担保に、その額の数倍〜数十倍の金額で米ドルやユーロなど外貨を売買し、差益を狙う取引。5万円の証拠金で20倍の取引をする場合に、1ドル=100円の時に1万ドルを100万円の枠を使って購入し、円安になって1ドル=110円の時にドルを売れば、110万円となり、10万円の利益が出る。多額の利益が期待できる一方、証拠金の数十倍の損失を被る危険もある。

2008年1月13日  読売新聞)

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