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【私説・論説室から】

賃上げで世の中に活力を

2008年1月13日

 日本経団連、日本商工会議所、経済同友会の財界三団体による新年祝賀会は大盛況だった。ホテルの大広間を埋め尽くした経済人は約千五百人。福田康夫首相はじめ与野党議員の姿も目立った。

 耳に入ってくる会話はもっぱら景気の話。「今年前半は停滞するが後半は良くなる」「しかし株価が大幅に急落した。今年は良くて横ばいだ」。会場内では誰もが“にわかエコノミスト”になる。

 三団体トップの記者会見でも、御手洗冨士夫経団連会長が堅調な雇用と個人消費・設備投資の拡大などを根拠に「春以降は回復して(二〇〇八年度の実質成長率)2%は確保できる」と強気な見方を述べれば、岡村正日商会頭は「現下は厳しい。後半に期待している」と控えめだった。

 東京新聞が昨年末に実施した主要二百十四社による景気アンケートによると、景気は「減速の兆候もある」とする回答が約四割に達した。米国サブプライムローン問題の世界的波及や原油・素材価格の高騰などがおもな理由だ。

 この先悲観論が強まるのは必至だが、今春闘では昨年以上の賃上げが必要である。

 景気に弾みをつけ安定成長を続けるためには個人消費の拡大がカギを握る。そのためには正社員だけでなくパート・派遣社員たちの時給も引き上げる。賃金底上げは景気の好循環形成にも、人材確保のためにも不可欠なのだ。

 戦後、日本企業は高度成長を達成し国際化やハイテク競争など幾多の困難を乗り越えてきた。実現できたのは働く者を大切にする経営があったからだ。経営者にはもう一度、雇用と賃金を重視した新たな日本型経営を構築してもらいたい。 (大沢 賢)

 

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