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解説:沖縄戦集団自決 防衛研、国の業務大きく逸脱 見解の根拠、なお論議

 防衛省の防衛研究所が、第二次大戦下の沖縄・集団自決に関する資料に「戦隊長命令ではなかった」とする見解を付けて図書館で一般公開していた行為は、国の機関としての業務を大きく逸脱したものだ。史実が確定していない段階で一方的な意見を押しつけた形であり、防衛研は猛省を迫られるだろう。

 米軍は1945年3月下旬、慶良間(けらま)列島に上陸。沖縄県の資料などによると、渡嘉敷(とかしき)島で329人、座間味(ざまみ)島で171人の住民が集団自決をした。

 沖縄女性史家の宮城晴美さんは著書「母の遺したもの」で、母親が座間味島で「村の助役が集団自決を申し出るのを目撃した」とする証言を載せた。防衛研はこれを「見解」の根拠の一つとしているが、事実かどうかにはなお議論がある。

 05年8月に座間味島の戦隊長、梅沢裕さんらが「自決を命令したと書かれ名誉を傷つけられた」として、岩波書店と「沖縄ノート」の著者、大江健三郎さんを提訴。一方、06年度の教科書検定で、文部科学省が「集団自決は旧日本軍の強制」との記述を削除するよう検定意見を付けたことに批判が高まり、昨年12月に「軍が集団自決へ関与した」との記述を認めた経緯もある。

 こうした中で「見解」を付けた防衛研の問題としては(1)「命令」について新たな証拠も提示せず、偏った意見を付けた(2)資料を幅広く提供する公共の図書館で解釈を押しつけた(3)見解を添付した後に資料のチェックをしていなかった--などが挙げられる。

 防衛研は利用者に予断を持たせないという当たり前の視点を、今一度確認する必要がある。【三木幸治】

毎日新聞 2008年1月13日 東京朝刊

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