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沖縄戦集団自決:防衛研「命令なし」 防衛省機関資料に見解、「不適切」削除へ

 防衛省の防衛研究所(東京都目黒区)が、第二次大戦時の沖縄・集団自決に関する資料に「集団自決は戦隊長命令でなかったことが証明されている」とする見解を付けていたことが分かった。資料は図書館で一般公開されており、専門家は「自決命令については事実が確定しておらず、読む者に予断を与える」と強く反発。同研究所は「不適切だった。削除したい」としているが、国の機関が一方的な見解を示していたことは、波紋を広げそうだ。

 見解が付けられていたのは「集団自決の渡嘉敷(とかしき)戦(現地参戦者手記)」と「座間味(ざまみ)住民の集団自決(同)」。資料では、渡嘉敷島では海上挺進(ていしん)隊第3戦隊長だった故赤松嘉次さん、座間味島では同第1戦隊長だった梅沢裕さんが「集団自決を命令した」と書かれている。

 見解はこれを強く否定し「『日本軍側の旧悪を暴く』という風潮の中で事実とは全く異なるものが、あたかも真実であるがごとく書かれたものである」と指摘。さらに「宮城晴海著『母の遺したもの』(高文研2000・12)等から赤松大尉、梅沢大尉の自決に関する命令が出されていないことが証明されている」(原文のまま、正しくは「宮城晴美」)とし、「防衛研究所戦史部」と書かれている。作成日の記載はない。

 同研究所図書館史料室の広瀬琢磨室長は「記載からみて、00年12月以降に添付されたと思われるが、経緯、日付とも不明」としたうえで「研究所戦史部は、資料保存のための価値判断が業務。事実関係の評価は不適切であり、削除したい。今後、資料のチェック体制も強化したい」と話している。

 同研究所は、安全保障、戦史に関する調査研究などを実施する機関。図書館は閉架式で誰でも利用でき、戦史関連資料約15万冊を一般公開している。【三木幸治】

 ◇政治的意図感じる--沖縄戦に詳しい林博史・関東学院大教授(戦争論、平和学)の話

 戦隊長が自決命令を出したかどうかは、住民の証言が分かれており、事実は確定していない。国の機関が公開している資料に一方的な見解を添付するのは、大きな問題だ。政治的意図すら感じる。

 ◇内容は正しいが…--現代史家の秦郁彦さん(日本近現代史)の話

 「戦隊長が命令を出していない」という内容は正しいと思うが、一般公開する資料に添付するには表現が強く、防衛研は慎重さに欠ける。また、記述者の名前も書くべきだった。削除されれば問題はないと思う。

毎日新聞 2008年1月13日 東京朝刊

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