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マイクロバス、3キロの力でドア開く 少年転落事故検証

2008年01月12日15時31分

 東京・練馬の東京外環道でマイクロバスからサッカー少年(当時11)が路上に転落死した事故は、運転していたコーチがドアのロックをかけ忘れたうえ、そばにいた少年の体がレバーに触れた拍子で走行中に開き、少年が外に投げ出された、とさいたま地検は11日、結論づけた。悲劇を繰り返さないためにはどうしたらいいのか。車の構造に詳しい長江啓泰・日大名誉教授(自動車工学)に同型車に乗ってもらった。

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 事故発生はクリスマスイブ。同地検などの調べでは、その日の遠征で1軍の試合に初めて出た少年は、時速60〜70キロで帰路を急ぐトヨタ・コースター(29人乗り)の昇降口ステップにいた。サッカーボールの上に座っていたという。

 長江さんが検証した同型車で見ると、ステップの広さは新聞紙大だ。少年は身長約140センチ。ボールに座り、ステップで車の揺れで体が動けば、頭か肩のあたりが開閉レバーに触れる可能性がある。

 ドアがロックされていない状態で、長さ約12センチのレバーを、人さし指でゆっくりと動かしてみた。左へ45度ほど傾けたとき、「カチャ」という音とともに開いた。バネばかりで計測すると、かけた力は3キロほど。乗用車のドアを中から開ける場合に必要な力とほぼ同じだった。

 道交法は走行中にドアが簡単に開かないようにするなど安全運転を義務づけており、運転していたコーチは11日、自動車運転過失致死罪で起訴された。今回の事故は車の「取扱書」に従っていれば起こらないはずだった。ドアは運転席でしか開かないように操作したうえで、ドアの窓部分のボタンで2重にロックする仕組みという。「取扱書」では、走行前にロックを確認するように「警告」していた。

 長江さんは「今回は運転者の不注意のため走行中に開く状態だったことが問題だった。ただ、車の安全装備で人為的ミスを補うことができる」と訴える。

 長江さんは、走行すれば、自動でドアにロックがかかる「速度感応型」か、ロックがかかっていない状態で走ると警報が鳴るシステムの導入を提案する。前者はすでに乗用車に使われており、マイクロバスでも十分可能な技術という。「乗用車より多くの人が乗るマイクロバスなら、安全装備はより重要だ」

 少年の父親は事故直後の記者会見で「走行中にドアが開かないよう、メーカーの技術者の方に工夫して頂きたい」と震える声で訴えた。

 トヨタは今回の事故を受け、事故防止策を検討中だという。

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