世界で最も有名な歴史上の日本人は誰だろう。答えを海外に求めると‐。2000年の千年紀(ミレニアム)に英国の歴史学者らが選んだ「過去千年を代表する世界の30人」が参考になる。

▼レオナルド・ダビンチやナポレオン、エジソンらに交じって日本からただ1人選ばれた人がいた。平安時代の女性作家、紫式部だ。「彼女が書いた源氏物語は日本文学の最高傑作にして、世界最初の長編小説」と評された。

▼3年前にはノルウェーのノーベル研究所が欧米などの作家100人に「史上最高の文学は?」と尋ねている。ベスト100(順位はなし)に、日本からは「源氏物語」が、川端康成の「山の音」とともに選ばれた。

▼2008年は「源氏物語」の千年紀とされる。紫式部日記の寛弘5(1008)年11月1日の項に、宮中ですでに読まれていたらしい記述があるという。書き写され読み継がれて千年を生きた。

▼〈いづれの御時にか、女御・更衣あまたさぶらひ給ひける中に〉で始まる物語は、「桐壺(きりつぼ)」から「夢浮橋」まで54帖(じょう)から成る。一部は教科書などでも読めるが、読み通すのは大変。400字詰め原稿用紙だと約4000枚に及ぶ。

▼海外ではこのほど全巻英訳が出た。英語の全訳は3回目。日本では与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子と続いた現代語訳に瀬戸内寂聴さんが加わっている。一度は読破したい。日本の誇りを自分のものにしたい。千年紀で折も良し。

=2008/01/13付 西日本新聞朝刊=