不穏下肢症候群(RLS:レストレスレッグス症候群、むずむず脚症候群ともいう)の患者は、この症状のない人に比べて脳卒中ないし心疾患のリスクが2倍であることが、米ハーバード大学(マサチューセッツ州)を中心とする研究によって示され、医学誌「Neurology」1月1日号に掲載された。症状が頻繁で重篤な人ほどリスクが高いという。
RLSは、脚にむずむず感が生じて動かさずにはいられない神経障害。静止しているときに症状が出やすく、主に夜間に生じるため、睡眠を妨げることもある。米国では成人の5〜10%にこの障害があるという。過去の研究でRLSと心血管疾患との関連が示されたが、懐疑的な見方も多く、これまでほとんど研究されていなかった。かつていびきが軽視され、睡眠時無呼吸のリスクが認識されるまでに数十年を要したのと同じ状況だと、米エモリーEmory大学医学部(アトランタ)のDavid Rye博士は指摘している。
今回の研究は、本来は睡眠呼吸障害の心血管への影響を調べるためデザインされた「睡眠心臓健康調査(Sleep Heart Health Study)」に参加した平均68歳の男女3,433人を対象としたもの。全参加者が回答した質問表に基づき、女性の7%、男性の3.3%がRLSであると診断された。
RLSのある人は、心疾患または脳卒中になる比率が2倍以上であり、この関連は症状が月に16回以上ある人および症状が重い人に特に強く認められた。今回の研究からは因果関係は明確にされていないが、この関連が生理学的意味をもつことも考えられる。RLS患者の多くは、一晩に300回も断続的に脚を動かしており、この動きが血圧および心拍数の増大に関わっていると著者らは述べている。また、RLSによる睡眠不足も心血管疾患の原因となると指摘されている。
Rye博士は「この研究により、RLSには単なる症状を超えた重要な意味があることが示された」と述べている。一方、別の専門家は、結論を急がずにさらに研究を重ねる必要があると指摘している。
これまで誰も気付いていなかったが、今後の研究では、RLSを治療することにより心疾患および脳卒中のリスクが軽減するかどうかを検討する必要があると、Rye氏は述べている。
原文
[2008年1月1日/HealthDay News]
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