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2008年1月13日

◎台湾便の就航 小松空港到着後の足は十分か

 六月就航の小松―台湾定期便の小松空港到着時間が午後六時に繰り上がったのは、乗客 にとっても地元にとっても好ましいことである。わずか四十分とはいえ、夕食時間に関係するだけに、受け入れる温泉旅館などはありがたいだろう。

 ただ、台湾からの個人客の場合、空港から宿泊地に向かう足が十分整備されていない点 が気にかかる。できることなら空港から温泉地などへ向かう二次交通の手段は、あった方が望ましく、たとえばバス便を設けるなら、行政も何らかの補助をしてほしい。定期便就航後をにらんで、今のうちから乗客の意向調査をしておく必要もあるのではないか。

 小松空港の連絡バスは、JR金沢駅、野々市車庫、JR小松駅、同福井駅行きの四路線 がある。観光バスが迎えに来る団体ツアー客は別として、個人旅行客の場合、この四路線のいずれかを利用することになるが、多くの利用が見込まれる加賀温泉方面行きのバスがない。

 南加賀地区の商工、観光関係者でつくる「モデル二次交通のあり方懇談会」は、小松空 港と加賀温泉郷を結ぶ交通手段について、観光客の需要に応じバスを手配するコールセンターや送迎タクシー会社の設立などを検討している。しかし、二次交通はできるだけ定期便化されている方がよく、不定期では使い勝手が悪い。台湾便の就航を機に、たとえばJR加賀温泉駅行き空港バスの運行を考えてもよいのではないか。

 小松空港に乗り入れるエバー航空(台湾)は、当初計画で小松空港到着時間を午後六時 四十分と予定していた。しかし、これでは入国手続きを終えて温泉旅館やホテルなどに入る場合、午後八時を過ぎてしまうだろう。四十分繰り上がったことで、夕食をゆっくり味わい、ナイトライフを楽しむ時間の余裕ができた。

 さらに小松空港発の時間についても午後七時半に、四十分繰り上がったメリットは大き い。台湾への飛行時間は三時間程度と見られるが、深夜だけに到着時間は少しでも早い方がよい。台湾からの旅行客に限らず、台湾を旅する日本人客にとっても同様であり、到着が四十分早くなるだけで、旅の印象は随分違ったものになるはずだ。

◎コメ改良新時代 温暖化への対策が不可欠に

 銘柄米のコシヒカリのように粘りや甘みがあり、色つやもよい赤米「富山赤71号」が 、富山県農業技術センターによって開発された。大きな特徴として、抗酸化作用で動脈硬化や心筋梗塞を防ぐタンニン(ポリフェノールの代表的なもの)を多く含んでいるため健康志向に対応できるほか、慶事に赤飯の代わりに活用できるという付加価値を加えた一石二鳥の品種改良だ。

 インド系のカサラスにコシヒカリをかけ合わせてつくった新品種二つをさらに交配させ たもので、赤色の遺伝子を失わせないまま遺伝子の98%がコシヒカリという新品種である。モミのままではコシヒカリと見分けがつかず混同しやすいため、三年後をメドにモミの先端を赤くするとか、葉に色がつくようにするなどさらに改良を加えて普及に乗り出すことにしている。わせ、なかて、おくてに分けると、新品種はコシヒカリと同じなかてだ。

 さらに厄介な問題がある。それは温室効果ガスの増加による温暖化が北陸にも及んでき て、平野部でのコシヒカリの栽培が難しくなってきたことである。出穂後の気温が高いと、「白未熟」といって、コメの芯(しん)が白くなって品質が低下する。

 富山県では二〇〇六年に白未熟が広範囲に観察され、この年のコシヒカリにおける一等 米の比率は57%に落ち込んだ。あわてた同センターは温暖化対策に取り組み、出穂期を遅らせる「遅植え」でコシヒカリの品質を保つ指導を始めているが、遅植えでは対応できないラインが滋賀県にまで上がってきたそうだ。

 京都議定書に基づく温室効果ガスの削減は今年から本番だ。削減が進んだとしても、こ れまでに増えたガスによって温暖化の「慣性」が今後一世紀は続くとされ、コシヒカリにも高温に強い性質を与える改良、すなわち温暖化対策が不可欠になってくるとみている。同センターはすでにわせでは「てんたかく」、おくてでは「てんこもり」と名付けた温暖化対応品種を開発した。北海道がうまいコメの適地になり、西日本とりわけ九州などの平野部はうまいコメが作りにくくなったと報告されている。北陸がうまいコメの産地として生き残るための戦略が求められている。


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