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2008年1月13日

 「竹釘(たけくぎ)いくさ」という言葉を本紙連載「われに千里の思いあり」で知った。鉄釘と違って頭のないのが竹釘で、だれが大将か分からず統制のとれない戦闘を意味している

竹製の釘は「爪楊枝(つまようじ)」そっくりの形で、寺院や茶室の屋根板を突き刺して止める針のような釘だ。ただし、最初は頭のない竹釘も、金槌で打ち付けると後部が潰れて広がり、板を押し止めて抜けないようにする「頭」ができる。見事な日本建築の知恵である

その太さ一ミリにも満たない竹の釘が百年以上も文化財を支えるのである。現在解体修理中の高岡の勝興寺や兼六園の内橋亭など茶室の屋根葺き替えで実際に見ることができる。貴重な機会だ。子どもたちに現場見学を奨めたい

小説によると「竹釘いくさ」は江戸時代初期にはまったく使われなくなった言葉だとある。二十一世紀の世でこんな話をして笑われそうだが、古語が身近な現実に生きている姿を紹介できるのも、北陸の伝統文化の一つだろう

もっとも、しっかりした頭(かしら)のいない集団が迷走する例えなら文化財を持ち出すまでもない。昨今の政界は、昔も顔負けの「竹釘いくさ」そのものだ。


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