ファイナンシャルプランナー 内藤 眞弓 さん |
この季節、書店には様々な家計簿が並んでいます。新年を迎えて、挑戦してみようと思われている方も、多いのではないでしょうか。しかし、つけるのが面倒、あまりメリットがないと、やめて |
“長続き”のコツ |
【家計簿を挫折した理由】
(図1をご覧ください)
例えば、スーパーでは、食品や日用品など、いろいろなものを買います。いざ、家計簿をつけるときには、様々な項目があり、それぞれに分けて、書き入れることになる。品物ごとに一つ一つ書き込んで
いくのは、時間もかかり、とても面倒・・・
家計簿で集計した結果、残っているはずのお金と、実際に残っているお金が合わない・・・
【家計簿を楽しくするには】
(図2をご覧ください)
予算をたてていないと、余ったと思っても、とっておかないとと考えがち。予算に貯蓄分もおりこんで、予算が余ったら旅行するなど、ご褒美を決めておけば、楽しくなります。
予算をたてるには、どんなことに、どれくらいお金を使っているのか、家計の実態を知ることから
始めます。家計簿をつけていなくても、一般のサラリーマンなら、手取りの年収から貯蓄額など
残ったお金を除けば、一年間に使った金額がわかります。
使ったお金の内訳は、「記録」と「記憶」の二つの視点から探ります。 (図3をご覧ください)
*「記録」・・・領収書や、カードの請求書、通帳などの記録でわかるもの。
*「記憶」・・・スケジュール帳やカレンダーの書き込み、部屋を見渡して最近買ったものを
思い出すこと。
どうしても分からないのであれば、それは「生活費」という項目にして、日常の買い物に使ったと
考えましょう。
このように、ざっくりとでも、実績が分かる点がポイントです。去年と同じくらいの生活とすれば、
そのままを今後の予算にすればよいですし、貯金を増やそうとか、教育費が増えそうとなれば、
その分を調整して予算をたてられます。
自分なりの項目作り
スーパーの買い物のような支出は、「基本生活費」。家族全員に関係しないものは、「パパ関連費」、
「子供関連費」などと自分なりの項目を作ると、まとめやすいです。 (図4をご覧ください)
「レジャー」や「帰省費」のように、行動にあわせて、まとめるのもよいと思います。
まずは、大きなくくりの金額をつかむことが重要。項目分けで悩むことがぐっと減るはずです。
これまでの家計簿は、出費を記録して反省するもので、「後ろ向き」になることが少なく
ありませんでした。 これからは、予算と照らし合わせながら、将来を考えていく「前向き」の
家計簿としてつきあっていくこと。いわば、「記録簿」から「予算管理簿」へ、考え方を変えることが、
大事です。
わが家の将来は? |
【Kさんの家計運営計画表】
Kさんは、毎日の支出を細かく記録し、それを毎月、項目ごとに集計。1年間にどれくらいの支出が
あるのかをつかんだ上で「家計運営計画表」を作りました。この表は、70歳までの10年間に予想される、
お金の出入りをまとめたものです。収入は、年金など確実に見込める金額。支出には、現在の家計簿を
元に、生活費などの金額を書き込みました。この計画表によれば、70歳までの10年間の収支は、
57万円の赤字。しかし、今ある貯金で十分に賄える金額であることがわかりました。
この「家計運営計画表」の最大のメリットは、将来のお金の流れを目に見える形にしていること。
将来が見通せないから、不安になったり、あせったりします。
考えられる限りのことを、計画表に盛り込めば、今これくらい使っても大丈夫、と安心できるのです。
Kさんは、お金に対する漠然とした不安がなくなり、家計を気にせず、好きなビールを飲めるように
なったといいます。
【家計運営計画表の作り方】
(図5をクリックすると拡大します。)
家族の年齢、イベントを記入
毎年の家族の年齢、子供の進学や就職、あるいは、親の介護、冠婚葬祭など、家族に関わることで
思いつくもの全てを書き込みます。また、車の買い換えや家の修繕なども分かれば書いておきましょう。
収入金額
給与収入は控えめに設定しておくことがポイント。確実に給料があがるとはいえない時代なので、
今と同じ額が続く、としてもいいでしょう。また、保険の満期金や個人年金の受け取りなど、
将来のある時点に入ってくる臨時の収入があることもありますので、それも忘れずに。
支出金額
家計簿を参考に、1年間、どれだけの生活費がかかるか、予想して、それを書き出します。
注意したいのは、物価の上昇。図では、年1%で計算していますが、多少の物価上昇を見込んだ方が、いいでしょう。支出を多めにすることが、のちのち慌てないコツです。
この表を作ることで、今後、必要なお金が具体的に分かることから、いつまでに、何をすればいいか、その対策を考えることができます。また、「赤字」の年があっても、1年1年ではなく、長い時間軸で考えられるようになるので、家計のやりくりの自由度が増すはずです。ただ、実際は、将来のこととなると、想定通りには、いかないものです。この表があれば、何がおこっても影響が出てくる箇所が分かりますし、その対策もたてやすくなります。そして、変更があれば、その都度、表を直していけばいいのです。
専門家からのアドバイス
家計簿は、反省するものと考えている方が多いかもしれませんが、決してそんなことはありません。
家計簿は、将来の生活設計・人生設計そのものです。夫婦、家族で共有しながら、未来に希望を
持つための家計簿として、いかしていきたいものです。
1年の初めは、家計簿をつけ始める絶好の機会です。楽しみながらつけられるよう、
是非、挑戦してみてください。
(ファイナンシャルプランナー 内藤 眞弓さん)