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心肺停止の77歳、13病院拒否し死亡 大阪・富田林

2008年01月13日05時55分

 大阪府富田林市で昨年末、救急患者が複数の病院から受け入れを拒否されて死亡した問題をめぐり、昨年3月にも心肺停止に陥った同市内の女性(77)が13病院に受け入れを断られ、約1時間後に死亡していたことがわかった。最も迅速な搬送が求められる心肺停止の患者でさえ、病院が受け入れに難色を示す状況が明らかになり、専門家は「救急医療は深刻な事態に追い込まれている」と指摘している。

 関係者によると、昨年3月14日午後9時50分ごろ、市内で入浴中の女性が心肺停止になったとして、同市消防本部の救急隊が急行。蘇生処置をしながら13病院に受け入れを要請したが断られ、近畿大付属病院(同府大阪狭山市)の救命救急センターに搬送した。同10時半に到着し、蘇生を試みたが、同11時に死亡が確認された。同センターの担当者は「搬送遅れが死亡につながったかどうかは不明」としている。

 心肺停止になると、1分ごとに蘇生率が7〜10%低下するとされる。同消防本部は病院選定の時間を短縮するため、119番通報などで患者が心肺停止とわかると、出動と同時に救急車と通信指令室の両方から搬送先を探す工夫をしているが、心肺停止の患者の受け入れ要請が10病院以上にのぼったケースが昨年だけでも複数あったという。

 杉本侃・大阪大名誉教授(救急医学)は「救急病院は患者の増加で余裕がなく、救命措置などにかかりきりになる心肺停止患者を敬遠する傾向があるのではないか。スタッフと予算を大幅に拡充しない限り、状況は改善しない」と話す。

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