名古屋高裁は1審が適用した予備的訴因の業務上過失致死傷罪を破棄し、量刑が大幅に上回る危険運転致死傷罪を適用した。悪質な運転に対して厳罰を求める被害者側の意を酌んだ判断で、一瞬にして命を奪われた4人とその遺族らの感情を考慮すれば当然といえる。
危険運転致死傷罪は、東京都世田谷区の東名高速道路で平成11年に起きた飲酒運転の大型トラックが乗用車に追突し、女児2人が死亡した事故をきっかけに、悪質な事故の厳罰化のため13年12月に施行された。
業務上過失致死傷罪では最高でも懲役6年。やむを得ない状況での事故なら納得できるが、飲酒運転などのように起こるべくして起こった悪質な行為で命を奪われた被害者にとって6年はあまりに短すぎる。遺族らにとって受け入れ難く、事故防止につながらない。
しかし、危険運転致死傷罪は、飲酒や薬物の影響で正常運転が不可能な場合や無軌道な高速運転など悪質運転の「故意」の立証が必要なため、適用が困難なのが現状だ。
実際に福岡市で昨年8月に起きた飲酒運転車の追突で幼児3人が死亡した事故では、危険運転致死傷罪などの罪に問われた被告に対し、福岡地裁が業務上過失致死傷と道交法違反の罪を予備的訴因として追加するよう地検に異例の命令を出した。飲酒による危険運転を裏付ける客観的事実が乏しく認定が困難と判断したとみられる。
ただ、こうした判断は厳罰化によって悪質な事故をなくす趣旨に逆行しかねない。遺族感情に応えるためにも裁判所が断罪できるよう、検察側の緻密(ちみつ)な立証が求められる。
(津田大資)
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