飲酒運転のすえ、3人の命を奪い、危険運転致死罪に問われた宮田和弘被告(50)に対し、神戸地裁尼崎支部が19日言い渡した懲役23年の判決。これまでの交通事故裁判で最も重い量刑には、「飲酒事故撲滅に一歩前進した」と評価する声がある一方、「前例にとらわれた判決」とする専門家もいた。
東京都世田谷区の東名高速で平成11年、トラック運転手による飲酒事故で娘2人を亡くした「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」の井上保孝さん(57)は「一歩前進」と評価した。
東名高速の事故後、井上さんら遺族らの署名活動などが実り、13年に危険運転致死罪を新設。厳罰化の流れができた。井上さんは「飲酒運転の撲滅を訴えるわれわれ遺族の思いに少しは応えた」と話した。
一方、今回の事故で犠牲になったタクシー運転手の岩田浩一さん=当時(48)=の長男、智文さん(26)は「遺族の気持ちを分かっていない」と悔しさを募らせた。
判決では、検察側が適用した併合罪に「疑義がある」とし、検察側が論告で指摘していた宮田被告の飲酒運転常習性についても「危険運転を繰り返していたわけではない」と指摘。懲役20年の判決が下された2年前の同種事故と比べ、「(量刑が)乖離(かいり)すれば、法的安定性が損なわれる」とした。
交通事故裁判に詳しい大嶋実弦(みつる)弁護士は「飲酒運転への社会の意識は以前と違うし、いまなお飲酒運転をやめない悪質さなどを考慮すれば、単純に比較できない」としたうえで、「厳罰化が進むなか、前例にとらわれた判決で残念だ」などと話した。
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