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緩和ケア病床、都市圏の不足が深刻化 2025年推計

2008年01月13日

 がん患者の痛みを和らげる専門的な処置を担う「緩和ケア病棟」のベッド数は今のままでは、団塊世代の高齢化が進む都市圏で特に不足が深刻化する――。こんな将来推計を、日本政策投資銀行がまとめた。緩和ケアはがんの末期だけでなく早期からの必要性が指摘されており、国や病院の対応が求められそうだ。

 公表されている様々な統計を同行が分析した。05年時点でみると、がんによる死亡1000人あたりの病床数は全国平均で10.4床。都道府県別では最大の高知が25床に対して、埼玉は2.4床と、10倍以上の格差がある。高知や福岡などは全体の病床数がもともと多く、「病院が患者確保のために一般病棟から転換するケースもある」(同行調査部の奈倉史子調査役)という。

 緩和ケア病床数が現状のままで、団塊世代が後期高齢者(75歳以上)となる2025年の数値を推計すると、高知でがん死亡者1000人あたり20床なのに対し、埼玉が1.4床まで減り、格差が約14倍まで拡大する。

 人口が少ない地方に比べて、団塊世代が多い大都市圏で、がん死亡者あたりの減少幅が大きい。埼玉、千葉、神奈川で4割以上減り、東京も25年には7.1床で、05年の11.4床に比べて4割近く減少。都内では現在でも、1病院あたりの入院待機患者が平均14.2人(06年度)と不足が顕在化しており、事態は一層深刻になりそうだ。

 がんの治療を受けている患者は140万人を超え、年間死亡者は約33万人に上る。医師や看護師数、病室の広さなど国の基準を満たす緩和ケア病棟は、同行の調べで全国に177施設、約3400床ある。奈倉調査役は「国は在宅での緩和ケアなどを推進しているが、都市ではひとり暮らしの高齢者が多く、緩和ケア病床のニーズは高い。特に大都市圏での増床を検討すべきだ」と話している。

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