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「我こそ民意」自も民も 補給支援法

2008年01月12日01時44分

 ちゃぶ台を返すように衆院が参院の結論を覆すことで11日、補給支援特別措置法が成立した。参院の否決を可能にしたのは、昨年の参院選で野党に過半数を与えた有権者の意向。しかし、与党もそれを再可決するのに必要な議席を05年総選挙で託されている。それぞれの選挙で初当選した議員たちも「我こそ民意だ」と言う。成立は、どちらの民意の反映なのか。議論は十分に尽くされたのか。

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自衛隊の補給活動再開に反対し、国会に向かってシュプレヒコールを上げる人たち=11日午後、東京・永田町で

 「本案は、出席議員の3分の2以上の多数で再び可決しました」。衆院議長の声が本会議場に響いた。拍手にわく与党席と、押し黙る野党席。

 与党に3分の2超の議席をもたらしたのは、05年の総選挙。当時の小泉首相から、すでに2人もトップが交代した。

 その選挙で初当選した猪口邦子議員(自民)は再可決後、「正当に得た議席で憲法上の必要な方法をとった。『郵政だけ(が問われた総選挙)』と言うのは間違った分析だ」と強調した。

 再可決に野党が首相問責決議で対抗し、衆院解散・総選挙へ――。そんな観測も一時は流れた。しかし自民党は内閣支持率低下に悩み、民主党は選挙準備が遅れ、民意を問う対決は先になりそうだ。この日、小沢民主党代表は大阪府知事選応援を優先し、採決直前に退席。与党は激しくヤジを浴びせた。

 「年金記録問題の『公約』をめぐる首相の発言がなければ、1月の解散はあり得た」。そう漏らす石原宏高議員(自民)は、衆院テロ対策特別委員会のメンバー。「法案は十分議論された。総選挙は遠のいたから、年金などの問題も与野党が議論を尽くせばいい」

 三谷光男議員(民主)も年末は総選挙による対決が近いと覚悟した。小沢氏に対しては「勝てる可能性のある戦いにエネルギーを使う方が合理的とはいえ、出席してもらいたかった。肩身が狭いし、士気にもかかわる」と複雑な思いだ。

 一方、午前中に法案を否決しながら、結論をひっくり返された参院。反対討論に立った牧山弘恵議員(民主)は、「政府や与党は『議論は出尽くした』と言うが、最近の主な世論調査では給油継続反対の意見が多い。こうした民意を無視するなんて」と憤慨した。

 藤田幸久議員(民主)は参院にくら替えして昨夏初当選。「参院で否決されたのだから、再可決は『片肺飛行』。衆院の与党議席は参院選よりも前の結果で、しかも首相は総選挙の審判を受けていない。3重の意味で民意が反映されていない」

 陸上自衛隊イラク派遣先遣隊長だった佐藤正久議員(自民)は「昨夏の参院選の結果が直近の民意だといわれるが、テロ特措法が争点だったとは思わない」と反論する。立候補のため退官してからこの日で満1年。再可決を見届け、特措法の説明と自衛隊員の激励のため、中東へ出発した。

■「与えられた任務、淡々と」海自隊員

 再びインド洋に派遣される可能性がある海上自衛隊の隊員らは、法可決を淡々と受け止めた。

 これまで延べ16隻の艦艇が派遣された広島県の呉基地。40代の1等海尉は「日本が脱落している間に万一大きなテロが起きれば、責任を問われかねないと心配していた。ブランクは大きいが、大事に至らない状況で復帰できたことは喜ぶべきこと」と話した。

 国会では給油活動をめぐる様々な疑惑が持ち上がったが、自身は「『テロとの戦い』に参加することは日本が国際社会での発言力を確保するために大きな意義がある」と心の整理をつけている。一方で「(活動を再開すれば)何が起こるかわからず、不安が全くないということはない」とも話した。

 さっそく護衛艦の派遣が予定されている神奈川県の横須賀基地。男性隊員は法成立について「事前にみんなが予想していたこと。我々は与えられた任務を淡々とこなすことが大事だと思っています」と話した。

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