発酵式CO2添加装置の製作

 イースト菌を嫌気発酵させてCO2を発生させる方法が知られている。ランニングコストが安いうえに、発生するCO2ガスの純度は非常に高い(これは拡散筒を使って確認した)。しかも、発酵によって生成される副産物(アルコール)は、脱窒菌を活性化するという、ガスボンベによる添加では得られない特徴を有する。
 なお、この装置は内圧がかかる圧力容器なので、破裂や液漏れの危険がある。以下を実施する場合はご自身の責任において行ってほしい。



 まずはプラスチックキャップのペットボトル(1.5L)とプラスチックジョイントを用意。
 ペットボトルのプラスチックキャップに4.8mmの穴を開ける。この作業はドリルなどの工具を使わないと難しい。

 穴を開けたら上からブラジョイントを差し込んで、バスコークなどシリコン系接着剤を両面から厚めに盛って硬化させる。

 寒天を使って培地を作る。砂糖:水:寒天の割合は、重量比で125:125:1が標準※1。砂糖は、グラニュー糖ではなく、上白糖として売られているものを使う。今回は上白糖500g、水500ml、かんてんクック4gを投入。最初にお湯だけを沸騰させ、寒天を良く溶かし込んでから砂糖を投入。弱火にしてゆっくりとかき混ぜながら、砂糖を完全に溶かす。
 ある程度冷えたらペットボトルに移し、上で作ったキャップを締めて冷蔵庫で冷やす。



 できあがった「午後の寒天培地」。

 いったん冷やした寒天を室内に放置し、室温と同じになったら、ぬるま湯400ccにティースプーン1杯のイースト菌を溶かして投入する。
 イースト菌を投入したらすぐにキャップを締めてジョイントにホースを接続し、途中に逆止弁を入れて水槽に導く。CO2の拡散は市販の拡散塔やCO2ストーンのほか、私が考案したエゼクター式溶解システムが使える。

 しばらく放置しておくとイースト菌が砂糖をエサに発酵をおこない、ブクブクと泡が出てくる。CO2ストーンを使った場合は、ある程度ボトルの内圧が高くならないと泡が出てこない。普通、4時間以上かかるが、お湯と一緒に砂糖を入れておくと、もう少し早くなる。

 ボトルは倒れることのないよう、設置する。また、ボトルは必ず水槽と同じ台の上か、それより下に設置する。間違っても水槽より上に置いてはならない。ボトルが水槽より上にあると、中の溶液が水槽内に流入し、重大な被害を与える可能性がある。

 CO2ストーンを使う場合はペットボトルに大きな内圧がかかるので、ストーンの設置位置を水槽の水面から20cm以内にとどめるのがよいだろう。
 発酵の持続時間は季節によっても違う※2が、2ヶ月〜3ヶ月。アルコール耐性のあるイースト菌がうまく繁殖してくれると、この間、イースト菌を交換することなく、発酵が持続する。

2005/1/25 追補
※1:培地の固さは、固すぎても柔らかすぎても問題が起こる。固すぎると培地の消費が悪く、容器の外周に沿って消費が進み、底部に到達すると気泡が溜まって培地全体が持ち上がってしまうことがある。また消費が済んだ後の洗浄も大変だ。柔らかすぎると発酵が激しくなり培地を無駄に消費して長持ちしない。
※2:環境温度により発酵の状態は大きく変化する。夏場の発酵が激しすぎる場合は、投入するイースト菌の量で調整すると良い。




その後の経過リポート

 追試の結果、投入するお湯の量でCO2発生の日持ちが決まることが解った。100ccのお湯で5〜6日程度、200ccでは12日くらい持続する。現在は400ccでテスト中。

お湯が少ないと早く終わってしまうのは、発酵によって生成されるアルコールによってすぐに飽和してしまうためだ。理屈の上ではお湯の量は多ければ多いほど持続が長いと言える。ただお湯の量が多いと倒れやすくなり、倒れたときの被害も大きい。

 CO2添加の効果はPHを観察することで解る。PHが添加前のレベルになったら、効果が切れたと判断する。

 この方法による添加は基本的に24時間連続となる。夜間の過剰添加が気になる場合は、バイパス弁を設けてガスを逃がすか、培地の砂糖濃度やイースト菌の量を少な目にしておくといいだろう。

 最初に投入する種イーストの量は、ティースプーン1杯で十分だった。砂糖をエサに増殖するので、もっと少なくても良いかも知れない。


1999/11/7
 400ccで発酵させていたCO2の気泡が減ってきたのでイースト菌を交換。今回の持続は20日程度だった。気温が下がったせいで最初に砂糖を入れて10時間経過しても一向に泡が出てこない。そこでボトルをタオルでくるんで保温してみたところ、ようやく泡が出てきた。
 最初に作った寒天培地だが、イースト菌により浸食されているもののまだ大半が残っているので相当日持ちしそうだ。

1999/11/20
 最近気温が下がってきて発酵が弱くなった。厳重に保温しているがあまり改善されない。これからどんどん寒くなってくるが、果たしてどの程度耐えられるだろうか?

2000/1/4
 中の寒天はだいぶ崩れ、イースト菌を追加してもあまり発酵しなくなってきた。寒天を取り出して口に含んでみると、猛烈に酸っぱい。これではだめなわけだ。
 そこで午後の寒天培地を再度作って再セットアップを行った。培地の寿命は今回の様子からするとおよそ2〜3ヶ月といったところだろう。

2000/1/10
 寒天培地を新しくしてから順調に泡が出ているが、糸状のコケが大発生してしまった。ひょっとすると、発酵ガスに含まれるCO2以外の成分が水に溶け、コケの栄養源になっているのではないだろうか?

2000/4/9
 糸状のコケが大発生した原因は、底床の富栄養化にあった。どうやら、セットアップの時に埋め込んだ肥料が原因らしい。プロホースを使って余剰栄養素を抜いたら、コケはなくなった。
 発酵式CO2添加装置を付けている水槽では、そのほかにもおもしろい現象が見られる。外部濾過器の洗車スポンジ濾材を見ると、気泡が沢山付いており、時々ブシューと言う音がして大量の気泡が排水パイプから出てくる。最初吸水フィルタの目詰まりで内部が不圧気味になっているせいだとおもっていたが、実験により違うことがわかった。イースト菌が発酵するとCO2の他にアルコールが出るが、これが水にとけ込んで、嫌気性濾過の促進に寄与しているのではないかと思われる。

2000/6/24
 現在砂糖と水の量を1:1にして培地を作っているが、砂糖を消費がわかりにくく、既に消費されつくした培地が邪魔をして反応が遅くなる傾向があるようだ。次に作るときは、2:1にして実験してみようと思う。

2000/10/23
 発生するCO2ガスの濃度を調べるため、拡散筒を使って実験してみた。発生するガスを写真のように拡散筒に貯めて、拡散筒が一杯になったらそのまま静置しておく。この実験は2回ほど実施したが、いずれも、内部の気体はほぼ全てが溶解した。CO2ボンベでは空気が溜まることがあるが、酵母は基本的にCO2ガスしか出さないので、極めて純度の高いCO2ガスを得られることがわかった。

2000/11/22
 何度も培地を製作した経験上、砂糖と水、お湯とイースト菌の比率について、ある程度の解を得た。それは、

 培地製作:砂糖と水は1:1
 種菌:お湯400ccに対しティースプーン1杯

である。このレシピに従って製作すると、1秒0.5〜1滴程度の安定した発酵が2〜3週間の間持続する。このページに紹介している製法を、これに従ってアップデートした。

2001/7/20
 培地の固さは寒天の量に比例するが、固さは発酵速度にも大きく関係している。そこで、

 砂糖:水:寒天の重量比率を500:500:4
 種菌:お湯400ccに対しティースプーン1杯

にすると、イースト菌の交換なしで、培地の砂糖をほとんど消費するまで発酵が持続することがわかった。
 ただ、初期発酵が激しく、水中のCO2濃度がかるく20mg/Lを越えてしまうため、最初は夜間のエアレーションを併用したほうがいいかもしれない。ちなみに、我が家の水槽では20mg/Lを越えても全く問題なかった。





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