AP通信—中途半端日記—

Pages

Categories

Archives

Blogroll

エスラックス発売記念講演会

November 10th, 2007

昨日(11/9)は,エスラックス発売記念講演会として,旭川医大の岩崎教授のご講演があった.昨年の臨床麻酔学会の会長をつとめられ,私としては頭が上がらない(教育講演の演者があたっていながら喘息発作のためドタキャンしてしまった).新しい筋弛緩薬もレミフェンタニル同様で,20年ぶりだそうだ.

ロクロニウム(エスラックス)の特徴は,オンセットが速いことにある.当然ながら”サクシニコルコリンを超えられないにしても,同等の速さがあるのか?”というところに注目が集まるが, そこまでの速さはないらしい.作用のdurationはベクロニウムと同じくらいということだから,万が一挿管できなくても自発呼吸が出てくるというのを期待するのは無理.その意味でもサクシニコルコリンはまだ必要そうだ. 電気けいれん療法でも当分は必要だろう.しかし,スガマデックス(非脱分極性筋弛緩薬の特異的拮抗薬)がでてくると話は変わってくる.”どんな深い筋弛緩状態からでも回復する”という話だから,筋弛緩薬は,持続投与していって終わったらスガマデックス投与ということになるのかな?重症筋無力症ではどうなるかわかならいが,ロクロニウムとスガマデックスがそろうと,筋弛緩に関しては大きく変化することになる.2年後ということです.

 

岩崎先生のお話の中で,強調されていた点の一つに,priming principleやtiming principleのうそというのがあって,これらは知識としては重要だが,筋弛緩薬のmargin of safetyがこれほど個体差が大きければ,量や時間を一律に決めて投与するのは危険であるという点を指摘されていた.旭川では,口にするのも禁止だそうです.

もう一つ,intubationによる喉頭のinjuryが意外におおいということで,これは最近論文がちらほらと出ていて,ホットな領域だそうです.見ていたら,今年でも筋弛緩モニターしていてもあまり役に立たないという趣旨の論文がA&Aにでていました.このことは,十分に筋弛緩が効いてからの挿管の方が,いいだろうという根拠になり,最近の”筋弛緩なしでも挿管なんて簡単”という人々(私です)への警告なるだろうとのことでした.私は,筋弛緩なしで挿管するときは上喉頭神経ブロックを使いますが,だめかな?

最後に5分ください(たぶん,もっともおっしゃりたかったことなんでしょうが)ということで宣伝されたことがあった.来年の10月から,1クールの予定で,麻酔科医を主人公としたドラマを作っているそうだ.脚本が倉本聰さんで,岩崎教授が医学監修だ.主人公は45才の大学准教授という設定で,配役は中井貴一氏が主人公だそうです(もうそんなことまで決まっているんですね).年齢とpositionは,私と同じですが....とっても,楽しみです.なんでも,昨年の臨床麻酔学会で倉本聰さんが講演されて,そのときに意気投合して決まったそうです.

 

2 Comments »

  1. S. H. says

    AP通信,拝見しました.

    >岩崎先生のお話の中で,強調されていた点の一つに,priming principleやtiming principleのうそというのがあって,これらは知識としては重要だが,筋弛緩薬のmargin of safetyがこれほど個体差が大きければ,量や時間を一律に決めて投与するのは危険であるという点を指摘されていた.旭川では,口にするのも禁止だそうです.

    通常priming principleでrapid sequence inductionを行なっている人間としてちょっと反論したいと思います.まず,すべてにおいてそうですが「一律に量や時間を決めて投与する」ということを臨床医はしないと思います.もしそんなことをしているとしたらそれは臨床医としては問題でしょう.筋力のある人,ない人,若年者や高齢者,いろいろな患者さんがいますし,それを見越して投与量が調節すると思います.さらに,投与時間に関してもpriming後の時間は確かにひとつの要素ですが,もうひとつのポイントは患者さん自身が感じている状況です.「瞼が重くなる」「少し呼吸困難感がある」というような状況が生じれば時間が経過していなくてももう十分です.ちなみにprimingの量は0.01-0.02 mg/kg程度の間で調整しています.

    いくらか効いていれば,後から十分量以上を投与するわけですから臨床的にはそれほど問題になりません.麻酔薬と筋弛緩薬がそこそこ効いていれば熟練医が気管挿管するのに何の障害もありません.乱暴な操作をしないことが肝要です.また,効く速度を考慮し導入時にはベクロニウムを先に投与,すぐ続けてフェンタニルとチアミラール(もしくはプロポフォール)を投与しています.それまでにフェンタニルもちょっとずつ加えています.

    priming principleを用いないのであれば,SAHの緊急手術や,未治療の狭隅角緑内障を合併した患者の緊急手術でも気管挿管にサクシニルコリンを使えということなんでしょうか?こちらの方が罪は重いと私は思います.

    挿管時の喉頭損傷に関してはそれほど頻度は高くないですが,問題なのはやはりarytenoid dislocationです.カフによる声帯麻痺は通常しばらくして直りますがarytenoid dislocationは耳鼻科の治療が必要です.早期であれば簡単に整復できますが,時期が遅れると結構厄介です.術後嗄声が認められた場合には早い目に喉頭ファイバーを施行して,診断をする必要があります.

    November 12th, 2007 | #

  2. Tsubokawa says

    そうですね,私もpriming principleはテクニックとしては使います.ちょっとブログ記事の書き方が悪かったのかもしれませんが,岩崎先生はprimingが効果を発現するまでの時間,2から3分間にもしprimingの投与量が適切でないと無呼吸や誤嚥が生じるかもしれない.そんなリスクを冒すなら最初から,本ドーズを投与した方がよいのではないか?という趣旨だと思います.

    November 12th, 2007 | #

Leave a comment

:mrgreen: :neutral: :twisted: :shock: :smile: :???: :cool: :evil: :grin: :oops: :razz: :roll: :wink: :cry: :eek: :lol: :mad: :sad:

RSS feed for these comments. | TrackBack URI

 

2008N January
M T W T F S S
« Dec    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

Recent Posts

Recent Comments

Sky3c Sponsored by Web Hosting