薬害C型肝炎被害者全員の一律救済を目指す「感染被害者救済給付金支給法案」が11日午前、参院本会議で採決され、全会一致で可決、成立した。同法は前文で原告側が求めていた国の責任と謝罪に触れ、被害者には症状に応じ1200万~4000万円を支給する内容。法成立を受け、原告・弁護団と政府は15日、和解基本合意書を締結する。全国10裁判所で係争中のC型肝炎訴訟は、順次和解に向かう運びだ。
救済法は、血液製剤「フィブリノゲン」と「第9因子製剤」が原因でC型肝炎ウイルスに感染した被害者や遺族に、給付金を支払うことが柱。国が200億円を投じる基金でまかない、製薬会社3社にも拠出を求める。
給付金は、(1)症状が悪化して死亡したり、肝がんや肝硬変になった人4000万円(2)慢性肝炎の人2000万円(3)ウイルスに感染しながら未発症の人1200万円--の3段階。受給後10年以内に症状が進行した人には、差額を支給する。申請期限は、18日ごろを予定する法施行日から5年以内で、対象者の認定は裁判所が行う。
また国の責任と謝罪に関しては、前文で「政府は、被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである」とうたっている。
同法に関し、野党は「救済から漏れる患者が残る」との懸念を抱いており、衆院厚生労働委員会では、救済対象を血友病患者らに拡大することの検討を盛り込んだ、5項目の委員会決議を全会一致で採択した。これを受け、法案は与党提案から与野党の共同提案へ変わった。参院厚労委でも同様の10項目の決議が採択された。
薬害肝炎訴訟をめぐっては、大阪高裁が昨年12月13日、製剤投与時期で救済内容を区別する和解骨子案を提示。政府は同20日、期間外に投与された原告に支払う救済金を増額した「全員救済案」を示した。しかし、原告側は受け入れを拒否したため、与党が議員立法による救済法策定に乗り出した。
これとは別に与党は、肝炎患者を広く救済する「肝炎対策基本法案」を衆院に提出したが、民主党の対案との調整がつかず、継続審議となる。【吉田啓志】
◇感染被害者救済給付金支給法のポイント
▽支給対象者はフィブリノゲンまたは第9因子製剤を投与され、感染した人と遺族
▽投与の事実、因果関係の有無、症状は裁判所が認定する
▽症状に応じ1200万~4000万円を支給。給付後10年以内に症状が進行すれば、差額も支給する
▽請求は法施行後5年以内
▽給付金支給のため、独立行政法人医薬品医療機器総合機構に基金を設置
毎日新聞 2008年1月11日 10時25分 (最終更新時間 1月11日 16時38分)