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追跡やまがた:天童・認可外保育施設の乳児死亡 問われる管理責任 /山形

 ◇「立件は困難」との見方も

 天童市の認可外保育施設「みんなのベビーホーム」で昨年11月、生後4カ月の女児が死亡した。市の調査で同園のずさんな管理体制が明らかになり、園は閉鎖された。天童署は施設側の管理体制に問題があったため乳児が死亡した疑いがあるとみて、業務上過失致死容疑で捜査を続けている。しかし、死因はいまだ特定されておらず、刑事責任を問うのは困難ではないかという見方もある。【林奈緒美】

 市は12月、市議会全員協議会で女児死亡の経緯を次のように報告した。

 11月2日午前9時10分、保育士が女児をマットにうつぶせに寝かせた。午後1時20分、女児がぐったりしているのに別の保育士が気付き、外出中の園長に電話で連絡した。園長は救急車を呼ばず、車で施設に戻り、女児を乗せて近くの医院に運んだ。蘇生措置を施してから救急車で病院に搬送したが、異変発見から約2時間後、死亡が確認された。

 報告の中で、同園の管理体制の問題点が指摘された。厚生労働省の基準では、3人の乳児に1人の職員がつくことが定められているが、同園では乳児10人に職員1人だった。捜査幹部は「乳児は手が掛かるのに職員が1人もいない部屋に30分も放っておいたというのは明らかに問題だ」と話す。

 同署は、職員の数が十分で、監視が行き届くなど管理体制が整っていれば女児の死は防げたとみて、施設側の過失責任を調べている。捜査のポイントは、(1)職員数の不足を知りながら放置していた(2)乳児室を職員が不在にする時間帯が毎日あった(3)職員が女児の異変に気付いた際、心肺蘇生や救急車の要請など適切な対応がされなかった--などだ。

 現場の状況から、死因は窒息死の可能性があるとみられたが、司法解剖の結果、死因は特定できなかった。現在は更に詳しい組織鑑定の結果を待っている。一般的に乳児が突然死した場合、死因が特定されないことが多い。今回のケースでも特定できなければ、ずさんな管理体制と女児の死亡との因果関係を明らかにするのは難しくなる。

 また、うつぶせ寝の乳児が死亡した場合、死因は乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断されることが多い。SIDSは健康な乳幼児を突然襲う原因不明の死で、死亡時の状況や精密な解剖検査によっても死因が説明できない。専門家からは「予見・予防ができない死に対し誰にも責任は問えないとの理由で、SIDSが事故や虐待の隠れみのになっている」と指摘されている。

 うつぶせ寝はSIDSを引き起こす危険性が高いと言われているものの、因果関係は医学的に明確ではない。このため今回のケースでも、施設側が女児をうつぶせに寝かせたことだけを指し、「過失があった」とは言い切れない。

 SIDSなどで子供を亡くした親たちでつくる「赤ちゃんの急死を考える親と弁護士の会」(横浜市)の櫛毛冨久美会長(48)は「ずさんな施設では、いまだにうつぶせ寝にしていてひどい事故が起きてしまう。全国でも同様の問題が起きているが、刑事責任が問われたケースはあまりない。親と弁護士の会としては泣き寝入りせずに闘っていきたい」と話している。

毎日新聞 2008年1月11日

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