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2008年1月12日

◎献血でHIV検出 不気味な広がりに要警戒

 石川県内で昨年、献血で採取した血液からエイズウイルス(HIV)が検出されたケー スが三件あったという事実は、HIV感染の不気味な広がりをうかがわせる。献血で確認されるというのは、本人がまったく感染の疑いを抱いていなかった可能性もあり、そうした無関心さや無知が国内のエイズ拡大に歯止めをかけられない最大の理由でもあろう。

 日本は献血で世界最高水準の検査体制を敷いているとはいえ、高感度検査でも感染が確 認できない期間があり、二次感染の恐れが全くないわけではない。献血で感染が判明するリスクを減らすには、身に覚えがある人に検査を促すしかないだろう。その日のうちに結果が分かる即日検査や夜間、休日検査ができるところも増え、匿名、無料で受けることができる。これらは意外と知られていないのではなかろうか。自治体は世界エイズデー前後や検査普及週間にとどまらず、エイズや検査への関心を促す啓発活動を積極的に展開してもらいたい。

 HIVの感染者・患者はここ三年、千人以上のペースで増加している。石川県によると 、県内の感染者の累計は二十八人、患者は十人。県赤十字血液センターによると、献血時のHIV検出は二〇〇〇年から〇六年までは計三件だったが、一年間に三件は初めてとなる。感染血液は廃棄されるとはいえ、検出数が増えれば献血事業の信頼を揺るがしかねない。

 エイズは発症を遅らせる薬などが登場したためか、一時期に比べると関心が薄れてきた ことは否めない。パートナーに気軽に検査を勧める米国などと違い、日本では検査が一般的になっていないのが気がかりである。先進国の中でも日本のエイズの特徴として、検査で感染が判明した時には既にエイズを発症しているという「いきなりエイズ」型の多さが指摘されている。血液センターがエイズ検査目的の献血を控えるようどれほど訴えたとしても本人に「もしや」の認識がなければ心に届くはずがない。

 HIV感染は十代で増加しているとの報告もある。携帯電話などを介して不特定の相手 と性交渉しやすい状況が広がった今、エイズ予防教育はとりわけ重要な課題となっている。

◎通常国会は視界不良 総選挙必死とは限らぬが

 臨時国会に引き続いて十八日に召集される通常国会は、衆院解散・総選挙含みで一段と 緊迫した与野党攻防が予想され、視界不良の展開になりそうな気配である。民主党は、政府・与党にとって年度内成立が至上命題の租税特別措置法改正案に待ったをかけて解散・総選挙に追い込む戦略を描き、与党内もそれに備えて選挙準備を急ぐという見方が有力だが、総選挙必至とは限らぬ自民、民主両党のお家の事情もかいま見られる。

 民主党の小沢一郎代表は次期総選挙を「最終決戦」と表現し、対決姿勢を強めている。 政権交代を目指す野党第一党として当然の姿勢とはいえ、そもそも民主党自身の選挙態勢は十分に整っているのだろうか。昨年の辞任騒動で小沢代表が図らずも漏らしたように、衆院で過半数をとるのは至難である。与党にしても、次の総選挙で現有議席を維持するのはほぼ不可能とみられる。三分の二以上の議席はまれなことであり、解散・総選挙を急がなければならない理由はないのではないか。

 ねじれ国会解消のため、総選挙を早く行うべきという声も聞かれる。しかし、民主党が 勝利してねじれが解消される保証はなく、与党が議席を減らしてよりやっかいなねじれ状態が続くことも考えられる。

 通常国会で最も重要なのは、新年度予算案とその執行に不可欠な関連法案の速やかな成 立であり、総選挙必至という空気に浮き足立って国会審議がおろそかになれば、国民はたいへんな迷惑を被ることになる。

 租税特別措置法改正では、道路特定財源の揮発油税などの暫定税率が焦点となる。民主 党は暫定税率維持の政府・与党案に反対しており、年度内に法改正ができなければ、揮発油税などは本来の税率に戻り、ガソリン価格も下がる。しかし、暫定税率を前提にした国、地方の財政は大幅な歳入欠陥が生じ、自治体の予算編成も支障をきたす。民主党は代わりの財源を示していない。

 法改正が新年度にずれ込めば、いったん元に戻った税率がまた引き上げられ、国民生活 や経済社会に大きな混乱をもたらすことになる。与党も民主党も「国民生活第一」というのであれば、それにふさわしい国会審議を願いたい。


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