国内で社会的に困難に陥っている人たちのことを難民と呼ぶのが、ここ数年の傾向のようだ。
昨年の新語・流行語大賞トップテンの一つに選ばれたネットカフェ難民は有名だ。住む場所がなく日雇いをしながら二十四時間営業のネットカフェで暮らす人たちを指す。格差問題を象徴する言葉だろう。
二〇〇八年版の「現代用語の基礎知識」(自由国民社)などで収録されたが、「広辞苑第六版」(岩波書店)では、新しすぎるとして採用されなかった。ただしネットカフェは収録してある。
読者から新語を募集し編集した「みんなで国語辞典!」(大修館書店)は医療難民を載せている。「保険診療を受けられないために医療費が高くなり、病気や事故でも医者の治療を受けられない人。健康保険料を納めないために、保険診療を打ち切られているのが原因である」と説明する。
医療・福祉問題で難民の用語を使うことが多い。療養病床の削減などで十分な福祉を受けられない恐れがある介護難民、納得し満足できる治療を求めるがん難民がいる。医師不足で希望する地域や施設で赤ちゃんを産めない出産難民は、切実な問題だ。
これだけ難民が増えているのは、少子高齢化が進んで日本を支えてきた年金や医療制度が崩壊しかかっているからだ。国民が安心して暮らせる社会保障システム再構築は、政治の責任である。