先月、秋田市の動物園でキリンの親子が相次いで急死した。親子は急死の直前、キリンを主人公にした「NHK」のテレビドラマの撮影のため、別々に引き離されていた。NHKは10日までにこのドラマの放送を中止する決定をした。 秋田市大森山動物園で去年7月、アミメキリンの夫婦「ジュン」と「リリカ」の間に雌の赤ちゃんが誕生した。待望の赤ちゃんは、夏に大輪の花を咲かせる「ひまわり」と名付けられた。この赤ちゃんキリンにドラマの出演話が持ち上がった。
ドラマは6年前、わずか10か月でこの世を去った義足のキリン「たいよう」の物語。この大森山動物園で生まれた「たいよう」は、運動中にシマウマとぶつかり、右の前足を骨折した。キリンにとっては命にかかわる大ケガだったが、必死に立ち上がろうとする「たいよう」に、動物園は世界でも例のない義足手術を決心した。
5回の手術を乗り越え、最後までケガと闘った「たいよう」に全国から励ましの手紙が届いた。その役に抜てきされたのが「ひまわり」だった。このドラマはNHK衛星放送で3月に放送される予定になっていた。
撮影は、先月10日から3日間、普段は「リリカ」と一緒にいる「ひまわり」を初めて引き離して行われた。すると、「ジュン」と「リリカ」に落ち着きがなくなるなど、ストレス症状が表れたという。そして撮影終了後の先月15日、「リリカ」が食事の後、急に苦しみだし、倒れて死んだ。そのわずか6日後、「ひまわり」も「リリカ」の後を追うように死んだ。生後5か月という短い命だった。
キリンの寿命は約25年で、長生きする動物だという。「リリカ」と「ひまわり」に何があったのか。東武動物公園・下康浩さんは「キリンは臆病(おくびょう)な動物。5か月だとよく母乳を飲む時期。母親の死はストレスになる」と話す。
命の大切さをテーマとしたドラマの撮影後に相次いで死んだ「リリカ」と「ひまわり」。NHK広報部は、10日までにドラマの放送の中止を決定。「制作会社の判断だ。キリンの急死は残念なことと受け止めている」と発表した。
「ジュン」は、「リリカ」と「ひまわり」を失い、1頭だけとなってしまった。秋田市大森山動物園は「キリンの死とドラマの撮影との因果関係はわからないが、今後は取材や撮影に慎重に対応したい」と話している。