◇ニヒルな悪を演じてみたい--菊五郎
◇正月らしく派手な幕切れに--松緑
国立劇場の正月公演で、初世桜田治助(じすけ)作「小町村芝居正月(こまちむらしばいのしょうがつ)」が尾上菊五郎らにより、初演以来219年ぶりに復活上演されている。補綴(ほてつ)は国立劇場文芸課。
平安時代前期の惟喬(これたか)、惟仁(これひと)両親王の皇位を巡る争いに題材を取った作品。大伴黒主(くろぬし)、小野小町、深草少将らが登場する。
黒主(菊五郎)は一味の紀名虎(きのなとら)(尾上松緑(しょうろく))らと天下を狙う。それを阻止しようとするのが深草少将(菊五郎)と恋人の小町姫(中村時蔵)。2人は黒主一味に奪われた剣を探すために「けだもの店(獣肉店)」の主人夫婦になりすまし、少将を慕うキツネ(尾上菊之助)も女性に化けて店を訪れる。大詰(おおずめ)の京都・神泉苑では、即位しようとした黒主を「暫(しばらく)」の趣向で、孔雀(くじゃく)三郎(松緑)が止める。
悪の黒主と善の少将。菊五郎は2役をつとめる。「黒主ではニヒルな悪を演じてみたい。『けだもの店』では、1人の男性が2人の女房を持って、どんちゃん騒ぎになる、というのを作ったらおもしろいかと思ってやっています」
時蔵は「『けだもの店』で、小野小町が世話の女房をやっているのが、しどころの見どころです」。松緑は、深草少将の家来で正義の味方の孔雀三郎と悪人の名虎の2役。「善と悪をどう演じ分けるかが課題です。大詰の孔雀三郎では、菊五郎のおにいさんの黒主の胸を借りて、お正月らしく派手な幕切れになればいいなと思います」。菊之助は「お客様の目に残る場面を作れるのではないかと思います」と話している。
27日まで。問い合わせは国立劇場チケットセンター(0570・07・9900)へ。【小玉祥子】
毎日新聞 2008年1月10日 東京夕刊