ブッシュ大統領、パレスチナ初訪問 和平促進にガザの壁2008年01月10日22時48分 中東歴訪中のブッシュ米大統領は10日、パレスチナ自治区を初めて訪れ、ラマラでアッバス自治政府議長と会談した。ブッシュ大統領は会談後の共同記者会見で、「適切な支援があれば、パレスチナ国家は誕生すると確信している。過激主義と戦う唯一の道は、代わりのビジョンを提示することだ」と、和平交渉の年内妥結という目標達成に自信を示した。アッバス議長も「歴史的な訪問だ」と意義を強調した。
会談の舞台となった議長府の敷地内には、ブッシュ氏が接触を拒否し続けた故アラファト前議長の墓もあり、共同会見も前議長の肖像写真の下、という皮肉な状況。それでもブッシュ氏は、アラファト時代なら考えられなかったパレスチナ側への配慮をみせた。 この日は霧のため、予定していたヘリではなく、エルサレムから陸路でラマラへ。分離壁や検問所を通過してきたブッシュ氏は、会見で「人々が不満に思うのは理解できる」と、パレスチナ人の苦境に共感を示した。 「『穴あきチーズ』では、うまく行かない」との例えも出し、パレスチナ国家の領土がイスラエルの入植地で寸断された状態では合意は難しいとの考えに立って、イスラエル側の妥協を促した。 だが、ブッシュ氏は入植地の凍結や撤去については、従来通りイスラエルの立場への「理解」をにじませ、具体的な妥協を取り付けられなかったことが露呈した。 9日にブッシュ氏と会談したイスラエルのオルメルト首相は共同会見の場で、ガザ自治区を拠点とした攻撃が根絶しない限り、パレスチナ独立は認めないという姿勢を明確に打ち出していた。同じパレスチナ自治区でありながらイスラム過激派ハマスが支配し、議長の統治が及ばない地区だ。 目標通り、和平合意を年内に取り付けられたとしても、ガザ抜きでは「絵に描いた餅」に終わりかねない危うさが、さっそく浮き彫りになった形だ。大統領の中東首脳外交は、冒頭から現実に直面しつつある。 アッバス議長は10日、「ガザの人々も我々と一体だ」と述べ、分裂の固定化を否定した。だが、統治権の及ばないガザからのロケット弾には、手をこまぬくしかない。オルメルト首相が今回突きつけた条件で、和平合意成立の見通しは非常に厳しくなり、議長も窮地に追い込まれた。 それでもブッシュ氏は10日、「ガザは厳しい問題だ。今後1年や1年半で解決はできないかもしれない」と認めつつ、「最終的には競い合う二つの将来像の間での選択だ」と指摘し、明確な国家像が提示されれば、大多数の人々は穏健主義を選択する、と主張した。
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