名古屋市交通局野並営業所(同市天白区)のバス運転手の男性(当時37歳)が昨年6月、職場でのいじめやパワーハラスメントを示唆する文書を残して自殺していたことが分かった。市側は当初「職務上の悩みや不満を述べていた様子はない」と遺族に説明していたが、文書が発見されたことを受けて10日、遺族に再調査に乗り出すことを伝えた。
遺族らによると、男性は07年6月13日午前、名古屋市緑区の伊勢湾岸自動車道の高架下でガソリンをかぶって焼身自殺を図り、翌14日に熱傷性ショックで死亡した。遺族は7月、男性のパソコンを調べ、同年2月5日作成の「上申書」と同年5月16日作成の「進退願」を発見した。
男性は「上申書」で、呼吸器系が弱いことを訴え「好きでこのような体質で生まれてきたわけではないのになぜ『葬式』呼ばわりされなければならないのでしょうか」と、声の小ささをからかわれたことを示唆。「パワーハラスメント・いじめであり、このような行為が自分の将来に影響を及ぼしかねないと考え、書面にした」と記していた。
また「進退願」では、男性が問いかけに黙っていたとの客の苦情に「自分は発声している」と反論。「このような電話がかかるたび『またおまえか』と苦虫をつぶしたような顔をされては私もこのような状況を好みません」と書いていた。
遺族は文書を発見する前の7月、異様な自殺方法などから「何かへの抗議の自殺ではないか」と、市側に原因究明を求める要望書を提出。市側は8月、「原因が分からず当惑している」などと回答していた。市は、両文書が実際には提出されておらず、今月に入って文書の存在を知ったとしている。【式守克史】
▽鈴木道夫・野並営業所長の話 いじめがあったとは聞いていないし、パワーハラスメントも断じてない。(文書の)中身を見せていただいたうえで調査する。
毎日新聞 2008年1月11日 2時30分 (最終更新時間 1月11日 13時23分)