人工衛星を使ってアジアの森林火災を早期発見し、拡大を防ぐプロジェクトに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が今春、乗り出す。世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約2割は火災などによる森林破壊が原因とされる。アジアは南米やアフリカと並ぶ森林火災の多発地帯で、3年後の実用化を目指す。森林保護や温暖化対策への貢献が期待される。
JAXAは米航空宇宙局(NASA)の衛星による地上の熱源観測から、森林火災を検出する研究を進めてきた。その結果、米国の森林火災は数百度の熱源となるが、泥炭地に広がるアジアの森林地帯では、火災が起きていても数十度程度にしかならず、これまで見落とされていたことが分かった。
プロジェクトでは米国や日本の地球観測衛星の過去や今後のデータを活用。北海道大の研究チームなどが、火災現場周辺の気温や湿度、風向を衛星データから解析、火災の検出精度向上に取り組む。現場では消火剤の確保が難しいため、現場周辺の樹木をどのように緊急伐採すれば、火災拡大を防げるかを判断する手法の確立も目指す。
解析結果はインターネットで公開する。既にインドネシア、タイ、モンゴルの3カ国がデータを試験活用する意向を示している。
この構想を提案し、北大などと衛星のデータ解析にあたる福田正己・米アラスカ大教授は「欧米の宇宙機関と協力し、世界規模で森林火災を防ぐ体制を整えたい。CO2の排出削減対策としても有効だ」と話している。【温暖化問題取材班】
毎日新聞 2008年1月11日 2時30分