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人毛の1万分の1 米で世界最小ラジオ開発
人毛の1万分の1という驚異的なサイズのラジオが研究者らの間で話題となっている。米カリフォルニア大学バークレー校のアレックス・ゼットル氏のグループが昨秋、開発に成功したもので、その小ささから細胞内部の状態を外部に発信するなど、医療分野への応用も期待されている。名古屋大理学部の篠原久典教授(物質理学)は「現段階ではラジオとしての性能は優れたものではないが、電波の送受信機能は十分ある。今後の研究に期待したい」と話している。
開発された世界最小のラジオは直径10ナノメートル(10億分の1メートル)のナノ炭素素材「カーボンナノチューブ」製。カーボンナノチューブの分子1個だけで、アンテナ、チューナー、アンプ、復調器のすべての役割をこなす。「真空管ラジオ」と似た仕組みで、振動することで電波を受信し電子を放出しながら復調する。チューブの太さを変えることで、異なる周波数に共鳴できるようになるとみられる。同校とローレンスバークレー国立研究所のチームが開発した。
チームは、FMラジオを受信してエリック・クラプトンの「いとしのレイラ」などの曲を再生することに成功。ラジオとして電波を受けるだけでなく、自ら電波を発信することも可能だという。
カーボンナノチューブは、平成3年に物理学者の飯島澄男氏によって発見された新素材。軽量で細いが、非常に強い性質を持っており、半導体や燃料電池への応用も期待されている。今回のラジオは、電子を放出するナノチューブの特性を利用して開発された。
サイエンスライターの竹内薫氏は「現在は研究者が遊び心で作ってみたという段階だが、この小ささは驚異的だ。小型カメラなどと組み合わせて血管や細胞の中に入れれば、血液成分や細胞の状態などをモニターすることもできるのではないか」としている。医療分野以外でも、携帯電話に組み込むなど、今後の展開に期待を寄せている。