福岡市がこども病院を人工島に移転させる方針を決めた問題です。
福岡市内の多くの小児科医が、人工島への移転計画に反対していますが、産科の医者の大半も反対する署名活動を始めました。
博多湾の埋立地、人工島に移転させるという福岡市の計画、何が問題なのかを取材しました。
福岡市城南区で、産婦人科を開業する日高輝幸医師。
お産は、365日昼夜を問わず、月に20人程の赤ちゃんを取り上げていますが、こども病院が人工島に移転されることには強い不安を感じています。
2000グラムに満たない未熟児がうまれた場合、市内の開業医は、新生児集中治療室=NICUを持つ施設に赤ちゃんを搬送します。
福岡市内では、九大病院、福大病院、こども病院の3か所が、どんなに小さな赤ちゃんでも受け入れが可能な体制を整えています。
しかし、現在は、どの施設も常に満床の状態で、こども病院には、開業医だけでなく、九大や福大、医療センターで生まれた赤ちゃんが搬送されることもあります。
現在は市内の真ん中にある、こども病院を福岡市は東区の人工島に移転しようとしています。
病院の分布地図を示した上で、「こども病院が市の東部に立地することは配置バランス上好ましい」としています。
しかし、現場の医師たちの見解はまったく逆です。
人工島に移転した場合、NICUを持つ基幹病院が市の東部に偏り、中央区より西側で生まれた赤ちゃんは、搬送までに時間がかかり、安全がおびやかされるというのです。
福岡市の西部に医療過疎地域が生まれる。
それを危ぐしているのです。
市の産科医会の理事を務める日高医師は、福岡市とその周辺の産科医にアンケートを実施しました。
回答のあった51人のうち、4分の3にあたる34人は、現在の場所に近い中央区や城南区への移転を望んでいます。
人工島を希望する医師は、8人でした。
人工島移転をめぐっては、小児科医も8割が反対、医療の質が維持できないとして69人が連名で、人工島への移転を止めるよう市に要望書を提出しています。
福岡市は、おととい、医師や市議らで構成する病院審議会に病院の移転問題を諮問しました。
しかし・・・。
医師や患者から反対の多い移転先については、諮問しませんでした。
しかし、小児科の専門医などからは、「場所も諮問してほしい」との声が上がり、審議会では、人工島という場所の是非についても議論される可能性が出てきました。
これまでこども病院と市民病院を統合して人工島に移転させる前の市長の方針に理解を示してきた医師会長。
RKBの取材に対し、場所の是非について、「発言する立場にない」とした上で、こう述べました。
人工島への移転に懸念を持つ産科医は、反対署名活動を始めています。
今回、産科医が行ったアンケート調査では、開業医の半数以上が、「後継者がいない」と答えています。
公立病院が産科医療に果たす役割はますます大きくなっていますが、現場の産科医の切実な声と、福岡市の計画との間にはかなりの溝があるようです。
福岡市は、審議会が5月に出す答申を参考にして計画を最終決定する方針です。