特定の空間に自由に光を閉じ込めることを可能にする新たな物質の構造を、東京大とNTT物性科学基礎研究所の研究グループが見つけた。従来知られていた構造より、実用化へ向けた作製や加工などが容易になる可能性がある。電流の代わりに光を使う「光集積回路」の製造など、光を自在に制御する技術に道を開く成果。米科学誌「フィジカル・レビュー・レターズ」電子版に発表した。
光を「ためる」技術が実現すれば、光を電流のように扱うことが可能になる。光は電気信号に比べて大量の情報を伝達でき、処理速度も大幅に向上するため、光を制御する技術の開発が進められている。
米の研究者が87年、シリコンなどの材料を光の波長程度の周期で並べた「フォトニック結晶」を使って、内部に光を閉じこめるアイデアを考案。しかし、作製や加工が難しいという難点があった。
東大生産技術研究所の枝川圭一准教授(材料科学)らは、新たな構造を探して数値シミュレーションを実施。シリコンで作った消波ブロックのような形の微小な物質を、ランダムにつなぎ合わせた構造でも可能なことが分かった。従来は、規則正しい周期性のある構造が必要だとされていた。この構造を「フォトニック・アモルファス・ダイヤモンド構造」と名付けた。
枝川准教授は「この構造は、ある種の高分子溶液など自然界にも比較的多く見られ、フォトニック結晶より簡単に作れる可能性がある。順調にいけば1年程度で製造可能かもしれない」と話している。【須田桃子】
毎日新聞 2008年1月10日 2時18分