2008年01月09日
1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 20:02:18.98 ID:5q427UiN0
世の中には、夢についての見解で二種類の人間がいる。
若くして夢を捨てるか、
____,ノレ"Z
/´ ̄´  ̄`>
/ __ __ `フ
| /  ̄フハ〈´ \ ∠
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|三|/ ̄`丶、 / ̄ゝl三〃
,.--、l ̄l ̄f1「 ` '´lf1 ̄l´レ‐イ
| ヽ〉j |_Uj 、 lU_,! |〈ノ|
l ヽ , `ー‐ '´ }〉 `ー '´|/ ,!
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ヽ. ( 〈`ー‐-----‐1〉ヽ/
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, イ´ ̄ ̄ ̄ ̄7 | \、__ ̄__/ | ヽ ̄ ̄ ̄/ヽ
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「サトシ、ポケモンマスターになるのじゃぞ」
老いても尚、夢を捨てずに生きるかだ。
「だから、ふざけんなジジィ。お前のケツに、俺のポケットモンスターを食らわせるぞ」
ちなみに俺は前者のほうだ。
3 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 20:03:44.51 ID:5q427UiN0
「何故、頑なに拒むんだ。男の子の憧れじゃろう」
「生憎なことに、私立への受験っていうモンスターと格闘中だ。ほっといてくれ」
俺こと、サトシの目の前に居るのは、オーキドと言う老体だ。
短く刈った白髪に、白衣。
ご近所からマッドサイエンティストとして、気味悪がられてる。
「受験だぁ? そんなもん捨てて、ポケモンマスターじゃ!」
「少年の将来をぶち壊すようなことを簡単に言うな」
この応酬は、数十回にものぼる。
出会うたび、これだ。
かなり短い俺の人生の中で、こいつと出会ったことほど汚点と呼べるものは無いだろう。
5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 20:05:14.99 ID:5q427UiN0
「あんまりふざけたことを抜かすと、せっかくの年金生活もふいになるぞ」
童顔に精一杯の凄みをきかせて、脅してみせる。
「解った。ポケモンマスターになったら、静かにしてあげる」
「根本的におかしいだろ」
こうかはばつぐんだ……とは、ほど遠い。
「お願い、お願い! このジジィの言うこと聞いて! ジジィのノスタルジーに付き合ってぇん」
そしてオーキドはついに狂う。
君が悪いぜ。
「なるほどな。つまりあれか。自分の夢を将来、弁護士になっちゃおうかなーって考えてる現実的な少年に託したいわけだ」
これ以上つきあいきれないと、俺は肩を竦めて退室しようとする。
ここは奴の研究所だ。
白い床、壁、そして俺らを囲む様々な機器。
どこで稼いだかは知らないが、高い天井を擦りそうな巨大な機械は、子供の俺から見ても高価と解る。
7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 20:08:07.48 ID:5q427UiN0
「弁護士? ――夢、見すぎ」
「うるせぇよ、死ね」
背中にかけられた言葉に、振り向きながら罵声をぶつけた。
弁護士になって、女をはべらし、スポーツカーを乗り回す……ささやかな夢じゃないかなぁ。
「子供の夢を壊すんじゃねぇ。お前は何様のつもりだ」
「世界でも五本の指に入るポケモン研究者様、かな? かな?」
確かにこいつはニュースに取り上げられるほどの有名人だ。
昼夜問わずに、ニュースの一面でこいつの顔が出ることもある。
――犯罪者として出てこないのは、非常に残念だ。
ご近所もそう思ってるだろう。
こいつをリスペクトしてる人も、本物を見れば失望するに違いない。
9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 20:10:14.78 ID:5q427UiN0
「いまどきというか、なんと言うか……この不景気にポケマスなんて勘弁してくれよ。フリーターと同義じゃないか」
または、ニートと言う。
「そうそう、今日はお前のパートナーを連れてきたからのう」
「聞けよ。がん無視かよ。もしもし、おじいさーん! ポケマスってフリーターじゃないんですかー!」
オーキドは、俺の言葉を無視して背を向けると、なにやらごそごそしだした。
手術台に見える机だ。
いや、ほんとに手術台なのかもしれない。
「じゃーん!」
2世代ほど時代を遅らした擬音で、オーキドは何かを取り出した。
紅い球体。
それが三つ机に並べられる。
「選んで」
オーキドはにっこり笑って、両手を打ち広げた。
「やだ!」
断る俺。
10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 20:10:30.75 ID:0l9JaaUs0
「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」
何事かサトシは振り返り声のしたドアのほうへとつき進む
「いてぇ・・・いてぇよぉ〜・・・」
声の主はオオキド博士の孫シゲルだった
あまりにも悲惨なその光景にサトシは一気に血の気が引いた
11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 20:12:50.61 ID:5q427UiN0
「なんで!?」
「選べば、自動的にポケマスになる旅が始まるじゃねーか!? そんな手にのらないね!」
驚いても困る。
「ポケマス……言い略し方じゃな」
「うるせぇ」
目を剥くオーキドに、俺は声を荒げて説明する。
「だいたいね。その生物――」
「ポケモン」
「……ポケモンによっては、10万ボルトとかいう犯罪的なものを発しやがる奴も居るんだろう?」
そんなものが野生となってのさばっているのは驚きだが、遠い昔からポケモンというのは居るらしい。
このポケモンは大変危険で、ニュースに出る死傷の数を増やすのは、人間よりもこいつらの方が多い。
そりゃあ、火を吹いたり、雷を落したり、果ては絶対零度を操ったりすれば当然だろう。
人間対ポケモンで戦争している国もあると聞く。
13 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:16:35.64 ID:5q427UiN0
「俺は犯罪者になりたくないし、家族や近所から白い目で見られたくない」
「そんなこと……」
現代兵器を凌駕する奴らのマスターということは、俺はヒトラー以上の悪者になるんじゃないだろうか?
ジークハイル。
そういえば最近買ったゲームは地雷だった。
「この波乱の時代だからこそ、わしはお前にポケモンと人間の架け橋になる――」
「もう充分だ」
それだから、オーキドの言葉を遮り、俺は今度こそ出口に向かう。
「これから俺は塾がある。他をあたるか、諦めてくれ」
慈悲として、選択肢は与えてやった。
14 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:19:16.54 ID:5q427UiN0
「サトシ……」
「じゃあな。せいぜい、頑張れ」
さびしそうな声色で俺の名を呼ぶオーキドに、後ろを振り向かずに手を振ってやる。
もう一度、自己紹介をしておこう。
俺の名前は、サトシ。
女が通り過ぎれば振り返るような顔、二次元の存在ではあるがバーローをも越える頭脳。
そしていまどき珍しくない、若くして夢を捨てた男前――それが俺だ。
後ろ髪を引かれる気分は、胸の内に秘めておく。
ジジィも言ったが、あれはノスタルジーだ。
それに付き合うつもりはない。
同情はしてもな。
15 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:22:43.78 ID:5q427UiN0
塾の仕度は、既に背負っているナップザックに入っている。
俺はオーキドの研究所を出た後、家へ戻らずに塾の道へ足を進めた。
進学校への勉強を行う場所は、森を通らなければならないのがとても不便だ。
俺が住んでるところは、ど田舎と言っていいほど、主要な都市から離れている。
トキワの森と呼ばれている大いなる自然を横切らなければ、そこへはたどり着けない。
「森なんか潰して、幹線道路でも作ってくれれば良いんだがな」
通過に所要する時間が頭をよぎり、俺は辟易して独りごちる。
自転車が無いので、徒歩だ。
親はまだ早いと言って、買ってくれない。
どうせ経済的な面の言い訳だろ? 大人って!
俺は家に居るであろう母親に憤慨しながら、森へと入った。
16 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:25:21.08 ID:5q427UiN0
実に見事な森林だ。
街への道を舗装していなければ、誰もが道に迷うだろう。
昼の日差しが、道を挟む形の木々の枝葉によって遮られている。
時間とは不釣合いに、ここは薄暗い。
暗いぐらい別段、怖くは感じないが……。
木々もそうだが、草むらもなかなか立派だ。
「ここから、ポケモンとやらが出るらしいけど……」
それはゲームのはなし。
実際には、草むら問わず奴らは出現するとのことだ。
時空を歪めて現れる、まさに化け物も存在するらしいから、ポケモンはどこからでも現れる。
17 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:26:55.41 ID:5q427UiN0
で、あるから――
「……?」
目の前に、緑色の物体が降ってきてもおかしくは無い。
ぼとん、と地面に叩きつけられたのは、警告色だった。
鳥などの捕食する生物を威嚇するための色。
――それは、端的に言えば芋虫だ。
19 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:31:02.27 ID:5q427UiN0
しかし、そいつのサイズは虫と呼べるのか。
俺の脚ぐらいある体躯を持ったそいつは、頭を上下させながらのろのろと動き出す。
ポケモンだ。
――はじめて見る……!
今までここを何十回も通ってきたが、こいつに出くわさなかったことは幸運だったのか。
それとも、この人生の中で一度も相対したかったことが、か。
「…………なんてこったい」
情けない声を出す俺を客観的に見れば、それが不幸だったことが解る。
何もできない。
これは危険な生物を前に、致命的である。
21 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:34:23.39 ID:5q427UiN0
テレビ、本、そしてオーキドの言葉。
何かを通して得た情報など、時に意味が無いと、俺は知った。
「だが、待て……」
こいつは虫だ。
そう、虫だ。
キャタピーと呼ばれるポケモン。
身体は大きいが、所詮は虫だ。
「俺は何もしないし、そっちも何かしてくるわけじゃないだろう……そうだよな?」
野生のポケモンは好戦的らしい。
だが好戦的という言葉は、こいつには似合わないだろう。
言語を介さぬ虫に、及び腰で尋ねる姿は不恰好だが、俺は聞かずにはいられなかった。
22 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:37:58.98 ID:5q427UiN0
もう一度言うが、キャタピーは好戦的とはとても思えない姿だ。
そのはずだが――
「あ……エサだ」
やったね! そうでもないみたいだ。
「っていうか、うおおおい!! 喋った!? 鳴き声はどうしたんだ!?」
エサって鳴く虫が居たら、謝罪しなければならない。
俺は慌てふためき、自分でも貧弱と思うファイティングポーズを取りながら後退さる。
24 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:40:31.95 ID:5q427UiN0
やはりポケモンとは、生物の範疇を越えているんだな。
混乱しながらも、頭の片隅でこのポケモンというものを考える。
ポケットサイズ……じゃないけど、モンスターと呼ばれるからには、その名に恥じないのだ。
こいつは何だ?
ポケモンとは、何か?
異常成長?
宇宙からの生物?
放射能の影響?
B級映画のような考察が国会やニュース等でされるが、未だにポケモンという生物のルーツが解らないらしい。
25 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:43:51.58 ID:5q427UiN0
「エサ……エサ……」
ルーツなんか知ったところで、この状況では役立たないけどね!
考えごとをしている内に、キャタピーは俺にとって心外な単語を吐きつつ、ずりずりと向かってきた。
遅いが……それが逆に怖い。
それは、捕食の動きなのだから。
人間をエサと称したが、こいつはどのように食べるのだろう。
鋭く二つ並んだ顎で、ばりばりとされるのだろうか。
それとも、溶かされてしまうのか。
いずれにしても、若き少年の末路にしては凄惨なことだ。
26 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:47:22.52 ID:5q427UiN0
どうするべきか。
ポケモンにはポケモン、というふざけたルールをオーキドから聞いたが、そんなもの守ってるやつなんか居ない。
危険なポケモンには、銃器を使う者も居る。
向こうは、10万ボルトや火炎放射なんか扱うんだからな。
自分の命がかかれば、それだけ凶暴になるのが人間。
俺にも銃が欲しい気分だ。
こんな子供の腕じゃ扱えないけど。
亀の歩みで進む奴に先駆けて、俺はそこら辺の木の棒を見繕った。
モンスター、には甚だ心もとないが、無いよりマシと自己暗示をかける。
――最近のRPGの初期装備は、これよりもっとマシだろうよ。
奴の胴体より細いそれを握り、軽く振った。
29 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:51:14.25 ID:5q427UiN0
「この身空でエサになるつもりなんか無い。そっちがその気なら、何とやらだ……」
空いた腕の手のひらに棒を打ち当て、俺は顎をしゃくった。
警告するが、奴は動きを止めない。
オーキドもそうだが、俺にはもしかして威厳というものが足りないのか?
時々、きみ女顔だねと、学校の女子に微笑みながら言われてしまうけど。
「エサ……」
「黙れ」
俺は威圧して言い、もう何歩か退がった。
この膠着状態を維持すれば、何とかなるんじゃないだろうか。
というか、この俊足で奴の横を通り過ぎれば、塾にも間に合うような気がする。
所詮、動物だ。
その意図を見透かしたのか、奴が突然動きを止めた。
俺の怪訝な顔の前で、チョココロネみたいな頭が持ち上がる。
30 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 20:53:52.37 ID:kkmVbXQn0
「おぉ……!」
反射的に横へと飛ぶ俺をかすめて、白い放射が伸びた。
最初の勢いは凄まじいが、それは途中で失速して地面に落ちる。
そこで初めて、それが奴の吐いた糸と解った。
たしか、糸を吐くって攻撃じゃなかっただろうか。
ぞっとしない顔をして、俺は屈む。
低くなった俺の頭上を二発目が通過した。
粘液に近い糸が空中から俺に垂れ下がる前に、地面へと転がる。
服が土色に汚れるのを無視して、俺は起き上がりながら奴を見た。
「ふふふ……」
二股の顎で器用に笑う虫がいるらしい。
34 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:00:17.53 ID:5q427UiN0
俺は低く呻きながら、手にした棒を構える。
――叩き潰すほかあるまい。
俺は覚悟を決めた。
「覚悟しろよ、この虫野郎!」
「あひゃひゃひゃっ」
口の端を持ち上げ、俺は気勢を吐いて突進した。
奴は神経を逆撫でする声をあげ、進行の邪魔をするべく糸を吐く。
こちらと奴を繋ぐその糸を、俺は棒を薙いで吹き飛ばした。
木綿の柔らかさで、それは吹き飛ぶ。
糸はあらぬ方向へと飛び、べちゃりと木に付着して止まった。
「人間は、ボクたちのエサになるべきなの。弱いから。そうでしょ?」
「そうかい」
弱いから捕食するという精神が、ポケモン全てにあるのなら、それは素晴らしいことだ。
俺と虫は、中空で眼光を激突させる。
35 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:06:33.49 ID:5q427UiN0
キャタピーすら、こんなにも好戦的だとは思わなかった。
これが現実……!
俺の好きな漫画に登場する利根川先生が言うような、素晴らしい世界。
今までオーキド=ポケモンだった故に、俺はその凶暴性を理解していなかったようだ。
なんたる不覚。
俺は、突進の勢いの乗せて棒を振り下ろす。
このままいけば、奴はぐしゃぐしゃだ。
「人間のくせに、ボクたちに敵対するんだぁ?」
「俊敏な野郎だ」
そう簡単にはいかない。
先ほどの歩みはどこへやら、奴の姿がふっと消える。
振り下ろした棒を戻しながら、俺は素早く後ろに目をやった。
なるほど、吐いた糸をコードのように戻したのか。
なかなかどうして、頭が回る。確かに、人間と戦争でもするに相応しいかも。
36 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:09:40.37 ID:5q427UiN0
急に塾をさぼって家に帰りたくなる。
どうして、俺はこんな森の中で芋虫と戦っているのだろう。
きっと奴らと争う人間もそう考えているはずだ。
害虫、害獣。
こいつらと戦うほど、不利益なことはないだろう。
相手は国を持たぬ、動物なのだ。
「今日はお開きにして、また今度ってのはどうだ? 次は友好の印として、昆虫用のゼリーを持ってきてやるよ」
くるくると虚空で棒を回す俺は、やつれた顔でそう提案した。
知ってるかい。
人間とは、和解や妥協ができる生物なのだ!
「だーめ」
「お前、あれだろ。昆虫用のゼリーをなめてるだろ? あれは、そうだ……不味いかもな。俺も試しに食べたことある」
それも人間同士ならの話と、また一つ賢くなる。
小首を傾げるキャタピーに、俺はため息をついて首を振った。
こうやって少年は、一歩一歩成長するのだろうが、それも今日で終わりそうだ。
37 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:16:27.68 ID:5q427UiN0
「来いよ。人間の怖さを教えてやる」
ここで死ぬわけにはいかない。
少年にもある闘争心が、軽い手招きとなって表れた。
俺の挑発に、キャタピーはいささかムっとして、巨大な目と思しき模様をしかめる。
そして、糸を吐く。
この距離だと、銃弾もかくやという速度だ。
身体を捻りながら、俺は棒を構えて突き進む。
背中を白い放物線が触れるが、無視だ。
駆け寄り、足元のキャタピーを蹴り上げる。
それより速く、奴は糸を更に引き戻していた。
黒い影が目前を横切り、次に奴の姿が明瞭となったのは木の幹でだ。
38 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 21:17:28.29 ID:lUh1fFt50
木にひっつき、キャタピーはこちらを伺う。
俺は既に、走っていた。
奴の模様の淵を数えれるほど接近した刹那――木が騒々しく揺れる。
ばしん、と小気味いい音が幹と手にした棒で発せられたが、手ごたえは無かった。
作用反作用で二つになる棒が舞う中、キャタピーが飛びついてくる。
俺は空いた手で奴を振り払い、身を投げ出した。
地煙をあげて回転し、立ち上がる。
キャタピーは背後だ。
棒を振り薙ぎながら、俺は後方に向き直った。
40 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 :2007/12/24(月) 21:23:00.76 ID:gHXDM6nJ0
どうやら再度体当たりする予定だったようで、空飛ぶチョココロネを見事はたき落した。
「ぎゃん!」
相変わらず虫が発するとは思えぬ鳴き声で、奴は鳴く。
ボールのように飛び、地面で二度ほどバウンドしてからやっと止まった。
「虫にすら本気だす俺、かっこいい。何事にも本気に取り組もう」
「ボクに苦戦してるって事実は、どうなの?」
「…………」
どうなの?
身体を小刻みに震わして起き上がるキャタピーは、減らず口を叩くほどの元気はあるようだ。
「金輪際、ポケモンと触れるつもりはないから良いんだよ。非日常な存在は、これ以上ごめんだね」
俺は現実的なんだ。
キャタピーの言葉を鼻で笑って一蹴し、俺は指を突き出した。
42 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:34:27.28 ID:5q427UiN0
そして自分の言葉を置き去りにするように駆ける。
渾身の力を両手にこめ、俺はキャタピーへ棒をたたきつけた。
今度は声はない。
ぐにゃりとした感触を残し、奴は静かになる。
結構な力のつもりだったのだが、緑の身体は潰れはしなかった。
体液という体液を全身から吐き出されても、それはそれで困るのだけど。
「いい夢を。――ポケモンも見るかどうかは知らないが」
棒を投げ捨て、俺は軽く吐息をついた。
奴の言うとおり、キャタピーごときに手こずるようでは、ポケモンマスターは弁護士になるよりも難しいだろう。
ここいらで、自分の力量が解って良かったのだ。
オーキドも涙をのんで納得するに違いない。
経験値は貰えなかったが、ささやかな満足感は得られた。
46 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:44:01.71 ID:5q427UiN0
何気なく視線をめぐらす俺は、木々の間で蠢く何かを捉えた。
まさか、と俺は慄く。
この森にキャタピーは一匹しかいないと、誰が言ったか。
投げ捨てた棒に飛びつき、俺は影を見た木々の方向を睨み付ける。
殺してはいないが、報復してくる可能性はある。
ポケモンに、博愛精神や同族という概念があるかによるが。
俺はある方に賭けるね!
47 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:46:19.18 ID:5q427UiN0
「彼……かどうかは知らないけど、こいつは気絶してるだけですよー? 俺、人間。ポケモン、だいすき」
平和を愛しているとアピールしつつ、向こうの出方を待つ。
もう一匹? 二匹?
どのような数でも、勝てる見込みがない。
どうして、ポケモンにはポケモンとジジィがほざくのかが解った気がする。
毒には毒を。
化け物にはモンスターを。
人間が適う相手じゃないんだ……。
今更ながら、俺はポケモンという存在に戦慄を覚えた。
48 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:52:34.09 ID:5q427UiN0
木々の足元――下生えである草むらが揺れた。
俺は、その時を待つ。
「……!」
黒い影が、舗装された道に倒れこんだ。
黒いと形容したが、まさしくそれは黒だ。
漆黒を纏ったそれは、大人ほどの大きさがある。
「おいおい……」
まさしくそれが大人だと気づいたとき、俺は困惑した。
そして視覚に集中していたせいか、思い出したかのように異臭が鼻をつく。
まぎれもなく、彼から漂い――
「どうやったら、こうなるんだ……」
黒こげになっていた。
50 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:59:08.57 ID:5q427UiN0
恐々、俺は彼を検分するべく覗き込んだ。
全身を焦がしたそいつは、元の服がどんな色をしていたかも解らない。
焼ききれた服から露になる皮膚すら、どす黒く染まっているのだ。
とりあえず白衣ではないようなので、オーキドじゃないみたいだ。
息絶えたと思われる男は、何かを握っていた。
身体と同じく黒の金属。
小型の銃だ。
それすらも焦げ、溶けた銃杷が手と融合していた。
「火事だったら、解るしな……」
俺は呟き、自分の考えを否定する。
どう考えても、こいつはポケモンと対峙したのだ。
しかもキャタピーより凶悪で、銃を持った人間よりも強い……。
52 リアルポケモン :2007/12/24(月) 22:06:22.96 ID:5q427UiN0
気味が悪い。とても。
俺は薄ら寒いものを感じ、早々にここから立ち去ろうと考える。
――小さく光るものを見つけたのは、偶然だった。
男の首元の地面で、きらりと光るものを俺は摘みあげた。
「R……?」
アルファベットのRだ。
どこかで見たことあるが、思い出せない。
何かの団体だろうか。
俺はそのバッチを放り投げてはキャッチして弄び、もう一度男の身体を見下ろした。
こいつは俗に言う、死体、であるはずなのに恐怖を感じない。
自己分析してみると、それは恐怖を感じる対象が他にあるからだと脳は訴えた。
ポケモン……俺を殺すにはお釣りが出るほどの存在。
死体が、何だと言うのだろうか。
53 リアルポケモン :2007/12/24(月) 22:13:33.18 ID:5q427UiN0
そこで、善良な市民として警察に通報しなければならないことに気づく。
このまま放置するのも忍びないし、流石に国家の機関と戦う勇気は無い。
携帯――これもまた親は早いと言う――は無いので、俺は来た道を戻ることにした。
家には当然、据え置きの電話がある。
塾にも一言置く必要があるだろう。
授業には間に合わない。
まったく、ポケモンとは不幸を運ぶ存在だ。
俺はまた嘆息して、よろよろと今度は幾分スローペースで歩き出した。
溜め息をつくと幸せが逃げると言うが、つかなかった人間が幸せになった事例を提示してからにして欲しいものだ。
どこまでも現実的な俺……サトシ。
童貞。
――ポケモンと出会う初体験は、墓まで持っていきたかった。
54 リアルポケモン :2007/12/24(月) 22:16:53.09 ID:5q427UiN0
そう動いたわけではないが、疲労をひどく感じる。
やはり、精神的なものが大きいのだろうか。
鎖を付けていない猛獣との戦いは、全身を鉛のようにした。
これから事情聴取があるのだと考えると、家に帰る足も自然に遅くなる。
映画やドラマ、漫画のように簡易に済むはずがないだろう。
いや、案外、またかということで済むのかもしれない。
そう思うと、俺はいかにポケモン離れした生活を過ごしていたのかを再認識した。
「わりと、幸せだったんですけどね……」
そのはずだ。
そうだろ、と俺は天を仰ぎ見、居るかもしれない神様に聞いてみた。
当然だが、俺は神の存在を信じていない。
ただの慰めだ。
75 リアルポケモン :2007/12/24(月) 23:25:34.22 ID:5q427UiN0
神を信じていない不出来な者への罰か。
天から応えが返ってきた。
青い空全体が明滅し、俺を取り巻く世界がストロボの白黒になる。
遅れて、轟音。
空を妬き、青白い光が不規則な軌跡を描いて地に落ちる。
何かが弾ける音がして、同時に森が悲鳴をあげた。
晴れなのに、雷だ。
お天気雨もあるのだから、そうおかしくはないが、今の状況だと悪い予感がしかしない。
十中八九、ポケモンのせいだろう。
人間が人工的に作り出すことも可能だが、その規模はそれを凌駕している。
落ちたのは、そう遠くない。
そして、帰り道の方角だ。
76 リアルポケモン :2007/12/24(月) 23:31:01.53 ID:5q427UiN0
関わりたくない、と眩暈がするのと同じくして、今のがカミナリという技なのを思い出した。
朝のニュースは言う。
火、水、雷など、自然現象を扱うポケモンには特に近づくな。
昼のニュースは言う。
そのポケモンによって、討伐しようとした特殊部隊が皆殺しにされた。
夜のニュースは言う。
そいつにあったら、死を覚悟しろ。
……ニュースとニャースって似てるよね。
俺は、猫派だ。
78 リアルポケモン :2007/12/24(月) 23:39:36.52 ID:5q427UiN0
今までポケモンマスターになるのは何とか逃れたが、今回の――絶対的な死、というのは免れないかもしれない。
ポケモンを死神と称する、どこかの評論家をニュースで見た。
それは、あながち誇張ではないのかもしれない。
のしたキャタピーと比較し、彼、あるいは彼女はどれほど強いのだろうか。
また明滅。
澄み切った青を強引に切り裂き、じぐざくな光が急降下する。
森の木々は蹂躙され、破砕されているのがここからでも解った。
小さく聞こえるパチパチという音は、おそらく火が付いたのだろう。
燃え広がらなければ、良いのだが。
木々の合間から、のろしの如く煙が立ち昇る。
それを見つけた誰かが駆けつけてくれればと思うが、直ぐに危険なことだと覚る。
80 リアルポケモン :2007/12/24(月) 23:48:14.84 ID:5q427UiN0
相手はモンスターだ。
一筋縄では、という言葉があるが、それ以上のことになるだろう。
マサラタウンに、こいつと戦える者が居たらありがたいが、それは望めない。
俺の後方で絶息する男は、銃を持っていたのだ。
男の子の憧れ、戦車や戦闘機。
発展する兵器の中で、銃というのは未だ優れている。
離れた安全圏から撃ち出し、小さな弾丸ながら相手を殺傷することができる。
まさに凶器。
――そう、銃は優れている。
だが、男は死んだ。
ならば、その安全圏――遠距離から発砲する場所すら、危険だということか。
至近距離でニアミスした可能性もあるけどね。
82 リアルポケモン :2007/12/24(月) 23:56:46.22 ID:5q427UiN0
ならば、人間に勝てる見込みなどあるまい。
雷の電圧は、1〜10億ボルトと言われている。
これを生身で防げたら、そいつにも化け物のレッテルを与えてやる。
そんな装備の存在を聞かないし、出来ることならお目にかからない人生を送りたい。
だが――
「何とかしなきゃな……」
マサラタウンの住人は、気の良い奴ばかりだ。
田舎であるのに、近所には勿論、外からの人間に対しても閉鎖的なイメージをおくびにも出さない。
悪くない町だ。
先の男に対しては特に感慨は沸かなかったが、知った顔が黒こげになれば別だ。
博愛精神は持ってない。
現実主義の俺に持っているのは、百人の他人よりも、大切な一人の精神だ。
やるしかあるまい。
84 リアルポケモン :2007/12/25(火) 00:02:35.31 ID:rgUfNcIS0
「先立つ不幸を……」
あまりに、短い人生だった。
皮肉げに口を歪めて、俺は歩き出す。
手には、キャタピー戦で活躍した木の棒だ。
二つに折れ、先は鋭くなっている。
叩くよりも、突くのに有利になったはずだ。
短くなったリーチはこの際、気にしない。
数十センチの差など、ポケモンには無きに等しいのだろうから。
木々が爆散して、破片を周囲にばら撒くのを耳と振動で感じる。
鼓膜をつんざく音は、次第に大きくなった。
地面も衝撃に揺れ、いかにその威力が凄まじいのかを俺に教えた。
当たってでは解るまい。
当たれば即、死ぬのだ。
世の中には、夢についての見解で二種類の人間がいる。
若くして夢を捨てるか、
____,ノレ"Z
/´ ̄´  ̄`>
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| /  ̄フハ〈´ \ ∠
. | | ′ ` l フ
|三|/ ̄`丶、 / ̄ゝl三〃
,.--、l ̄l ̄f1「 ` '´lf1 ̄l´レ‐イ
| ヽ〉j |_Uj 、 lU_,! |〈ノ|
l ヽ , `ー‐ '´ }〉 `ー '´|/ ,!
`ーl _____ , |‐'
ヽ. ( 〈`ー‐-----‐1〉ヽ/
> `ー─---─'´ ,イ\
, イ´ ̄ ̄ ̄ ̄7 | \、__ ̄__/ | ヽ ̄ ̄ ̄/ヽ
/ | / ヽ  ̄ ノ \ / \
「サトシ、ポケモンマスターになるのじゃぞ」
老いても尚、夢を捨てずに生きるかだ。
「だから、ふざけんなジジィ。お前のケツに、俺のポケットモンスターを食らわせるぞ」
ちなみに俺は前者のほうだ。
「何故、頑なに拒むんだ。男の子の憧れじゃろう」
「生憎なことに、私立への受験っていうモンスターと格闘中だ。ほっといてくれ」
俺こと、サトシの目の前に居るのは、オーキドと言う老体だ。
短く刈った白髪に、白衣。
ご近所からマッドサイエンティストとして、気味悪がられてる。
「受験だぁ? そんなもん捨てて、ポケモンマスターじゃ!」
「少年の将来をぶち壊すようなことを簡単に言うな」
この応酬は、数十回にものぼる。
出会うたび、これだ。
かなり短い俺の人生の中で、こいつと出会ったことほど汚点と呼べるものは無いだろう。
「あんまりふざけたことを抜かすと、せっかくの年金生活もふいになるぞ」
童顔に精一杯の凄みをきかせて、脅してみせる。
「解った。ポケモンマスターになったら、静かにしてあげる」
「根本的におかしいだろ」
こうかはばつぐんだ……とは、ほど遠い。
「お願い、お願い! このジジィの言うこと聞いて! ジジィのノスタルジーに付き合ってぇん」
そしてオーキドはついに狂う。
君が悪いぜ。
「なるほどな。つまりあれか。自分の夢を将来、弁護士になっちゃおうかなーって考えてる現実的な少年に託したいわけだ」
これ以上つきあいきれないと、俺は肩を竦めて退室しようとする。
ここは奴の研究所だ。
白い床、壁、そして俺らを囲む様々な機器。
どこで稼いだかは知らないが、高い天井を擦りそうな巨大な機械は、子供の俺から見ても高価と解る。
「弁護士? ――夢、見すぎ」
「うるせぇよ、死ね」
背中にかけられた言葉に、振り向きながら罵声をぶつけた。
弁護士になって、女をはべらし、スポーツカーを乗り回す……ささやかな夢じゃないかなぁ。
「子供の夢を壊すんじゃねぇ。お前は何様のつもりだ」
「世界でも五本の指に入るポケモン研究者様、かな? かな?」
確かにこいつはニュースに取り上げられるほどの有名人だ。
昼夜問わずに、ニュースの一面でこいつの顔が出ることもある。
――犯罪者として出てこないのは、非常に残念だ。
ご近所もそう思ってるだろう。
こいつをリスペクトしてる人も、本物を見れば失望するに違いない。
「いまどきというか、なんと言うか……この不景気にポケマスなんて勘弁してくれよ。フリーターと同義じゃないか」
または、ニートと言う。
「そうそう、今日はお前のパートナーを連れてきたからのう」
「聞けよ。がん無視かよ。もしもし、おじいさーん! ポケマスってフリーターじゃないんですかー!」
オーキドは、俺の言葉を無視して背を向けると、なにやらごそごそしだした。
手術台に見える机だ。
いや、ほんとに手術台なのかもしれない。
「じゃーん!」
2世代ほど時代を遅らした擬音で、オーキドは何かを取り出した。
紅い球体。
それが三つ机に並べられる。
「選んで」
オーキドはにっこり笑って、両手を打ち広げた。
「やだ!」
断る俺。
「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」
何事かサトシは振り返り声のしたドアのほうへとつき進む
「いてぇ・・・いてぇよぉ〜・・・」
声の主はオオキド博士の孫シゲルだった
あまりにも悲惨なその光景にサトシは一気に血の気が引いた
「なんで!?」
「選べば、自動的にポケマスになる旅が始まるじゃねーか!? そんな手にのらないね!」
驚いても困る。
「ポケマス……言い略し方じゃな」
「うるせぇ」
目を剥くオーキドに、俺は声を荒げて説明する。
「だいたいね。その生物――」
「ポケモン」
「……ポケモンによっては、10万ボルトとかいう犯罪的なものを発しやがる奴も居るんだろう?」
そんなものが野生となってのさばっているのは驚きだが、遠い昔からポケモンというのは居るらしい。
このポケモンは大変危険で、ニュースに出る死傷の数を増やすのは、人間よりもこいつらの方が多い。
そりゃあ、火を吹いたり、雷を落したり、果ては絶対零度を操ったりすれば当然だろう。
人間対ポケモンで戦争している国もあると聞く。
「俺は犯罪者になりたくないし、家族や近所から白い目で見られたくない」
「そんなこと……」
現代兵器を凌駕する奴らのマスターということは、俺はヒトラー以上の悪者になるんじゃないだろうか?
ジークハイル。
そういえば最近買ったゲームは地雷だった。
「この波乱の時代だからこそ、わしはお前にポケモンと人間の架け橋になる――」
「もう充分だ」
それだから、オーキドの言葉を遮り、俺は今度こそ出口に向かう。
「これから俺は塾がある。他をあたるか、諦めてくれ」
慈悲として、選択肢は与えてやった。
「サトシ……」
「じゃあな。せいぜい、頑張れ」
さびしそうな声色で俺の名を呼ぶオーキドに、後ろを振り向かずに手を振ってやる。
もう一度、自己紹介をしておこう。
俺の名前は、サトシ。
女が通り過ぎれば振り返るような顔、二次元の存在ではあるがバーローをも越える頭脳。
そしていまどき珍しくない、若くして夢を捨てた男前――それが俺だ。
後ろ髪を引かれる気分は、胸の内に秘めておく。
ジジィも言ったが、あれはノスタルジーだ。
それに付き合うつもりはない。
同情はしてもな。
塾の仕度は、既に背負っているナップザックに入っている。
俺はオーキドの研究所を出た後、家へ戻らずに塾の道へ足を進めた。
進学校への勉強を行う場所は、森を通らなければならないのがとても不便だ。
俺が住んでるところは、ど田舎と言っていいほど、主要な都市から離れている。
トキワの森と呼ばれている大いなる自然を横切らなければ、そこへはたどり着けない。
「森なんか潰して、幹線道路でも作ってくれれば良いんだがな」
通過に所要する時間が頭をよぎり、俺は辟易して独りごちる。
自転車が無いので、徒歩だ。
親はまだ早いと言って、買ってくれない。
どうせ経済的な面の言い訳だろ? 大人って!
俺は家に居るであろう母親に憤慨しながら、森へと入った。
実に見事な森林だ。
街への道を舗装していなければ、誰もが道に迷うだろう。
昼の日差しが、道を挟む形の木々の枝葉によって遮られている。
時間とは不釣合いに、ここは薄暗い。
暗いぐらい別段、怖くは感じないが……。
木々もそうだが、草むらもなかなか立派だ。
「ここから、ポケモンとやらが出るらしいけど……」
それはゲームのはなし。
実際には、草むら問わず奴らは出現するとのことだ。
時空を歪めて現れる、まさに化け物も存在するらしいから、ポケモンはどこからでも現れる。
で、あるから――
「……?」
目の前に、緑色の物体が降ってきてもおかしくは無い。
ぼとん、と地面に叩きつけられたのは、警告色だった。
鳥などの捕食する生物を威嚇するための色。
――それは、端的に言えば芋虫だ。
しかし、そいつのサイズは虫と呼べるのか。
俺の脚ぐらいある体躯を持ったそいつは、頭を上下させながらのろのろと動き出す。
ポケモンだ。
――はじめて見る……!
今までここを何十回も通ってきたが、こいつに出くわさなかったことは幸運だったのか。
それとも、この人生の中で一度も相対したかったことが、か。
「…………なんてこったい」
情けない声を出す俺を客観的に見れば、それが不幸だったことが解る。
何もできない。
これは危険な生物を前に、致命的である。
テレビ、本、そしてオーキドの言葉。
何かを通して得た情報など、時に意味が無いと、俺は知った。
「だが、待て……」
こいつは虫だ。
そう、虫だ。
キャタピーと呼ばれるポケモン。
身体は大きいが、所詮は虫だ。
「俺は何もしないし、そっちも何かしてくるわけじゃないだろう……そうだよな?」
野生のポケモンは好戦的らしい。
だが好戦的という言葉は、こいつには似合わないだろう。
言語を介さぬ虫に、及び腰で尋ねる姿は不恰好だが、俺は聞かずにはいられなかった。
もう一度言うが、キャタピーは好戦的とはとても思えない姿だ。
そのはずだが――
「あ……エサだ」
やったね! そうでもないみたいだ。
「っていうか、うおおおい!! 喋った!? 鳴き声はどうしたんだ!?」
エサって鳴く虫が居たら、謝罪しなければならない。
俺は慌てふためき、自分でも貧弱と思うファイティングポーズを取りながら後退さる。
やはりポケモンとは、生物の範疇を越えているんだな。
混乱しながらも、頭の片隅でこのポケモンというものを考える。
ポケットサイズ……じゃないけど、モンスターと呼ばれるからには、その名に恥じないのだ。
こいつは何だ?
ポケモンとは、何か?
異常成長?
宇宙からの生物?
放射能の影響?
B級映画のような考察が国会やニュース等でされるが、未だにポケモンという生物のルーツが解らないらしい。
「エサ……エサ……」
ルーツなんか知ったところで、この状況では役立たないけどね!
考えごとをしている内に、キャタピーは俺にとって心外な単語を吐きつつ、ずりずりと向かってきた。
遅いが……それが逆に怖い。
それは、捕食の動きなのだから。
人間をエサと称したが、こいつはどのように食べるのだろう。
鋭く二つ並んだ顎で、ばりばりとされるのだろうか。
それとも、溶かされてしまうのか。
いずれにしても、若き少年の末路にしては凄惨なことだ。
どうするべきか。
ポケモンにはポケモン、というふざけたルールをオーキドから聞いたが、そんなもの守ってるやつなんか居ない。
危険なポケモンには、銃器を使う者も居る。
向こうは、10万ボルトや火炎放射なんか扱うんだからな。
自分の命がかかれば、それだけ凶暴になるのが人間。
俺にも銃が欲しい気分だ。
こんな子供の腕じゃ扱えないけど。
亀の歩みで進む奴に先駆けて、俺はそこら辺の木の棒を見繕った。
モンスター、には甚だ心もとないが、無いよりマシと自己暗示をかける。
――最近のRPGの初期装備は、これよりもっとマシだろうよ。
奴の胴体より細いそれを握り、軽く振った。
「この身空でエサになるつもりなんか無い。そっちがその気なら、何とやらだ……」
空いた腕の手のひらに棒を打ち当て、俺は顎をしゃくった。
警告するが、奴は動きを止めない。
オーキドもそうだが、俺にはもしかして威厳というものが足りないのか?
時々、きみ女顔だねと、学校の女子に微笑みながら言われてしまうけど。
「エサ……」
「黙れ」
俺は威圧して言い、もう何歩か退がった。
この膠着状態を維持すれば、何とかなるんじゃないだろうか。
というか、この俊足で奴の横を通り過ぎれば、塾にも間に合うような気がする。
所詮、動物だ。
その意図を見透かしたのか、奴が突然動きを止めた。
俺の怪訝な顔の前で、チョココロネみたいな頭が持ち上がる。
チョココロネふいたwwww
31 リアルポケモン :2007/12/24(月) 20:55:48.49 ID:5q427UiN0
「おぉ……!」
反射的に横へと飛ぶ俺をかすめて、白い放射が伸びた。
最初の勢いは凄まじいが、それは途中で失速して地面に落ちる。
そこで初めて、それが奴の吐いた糸と解った。
たしか、糸を吐くって攻撃じゃなかっただろうか。
ぞっとしない顔をして、俺は屈む。
低くなった俺の頭上を二発目が通過した。
粘液に近い糸が空中から俺に垂れ下がる前に、地面へと転がる。
服が土色に汚れるのを無視して、俺は起き上がりながら奴を見た。
「ふふふ……」
二股の顎で器用に笑う虫がいるらしい。
俺は低く呻きながら、手にした棒を構える。
――叩き潰すほかあるまい。
俺は覚悟を決めた。
「覚悟しろよ、この虫野郎!」
「あひゃひゃひゃっ」
口の端を持ち上げ、俺は気勢を吐いて突進した。
奴は神経を逆撫でする声をあげ、進行の邪魔をするべく糸を吐く。
こちらと奴を繋ぐその糸を、俺は棒を薙いで吹き飛ばした。
木綿の柔らかさで、それは吹き飛ぶ。
糸はあらぬ方向へと飛び、べちゃりと木に付着して止まった。
「人間は、ボクたちのエサになるべきなの。弱いから。そうでしょ?」
「そうかい」
弱いから捕食するという精神が、ポケモン全てにあるのなら、それは素晴らしいことだ。
俺と虫は、中空で眼光を激突させる。
キャタピーすら、こんなにも好戦的だとは思わなかった。
これが現実……!
俺の好きな漫画に登場する利根川先生が言うような、素晴らしい世界。
今までオーキド=ポケモンだった故に、俺はその凶暴性を理解していなかったようだ。
なんたる不覚。
俺は、突進の勢いの乗せて棒を振り下ろす。
このままいけば、奴はぐしゃぐしゃだ。
「人間のくせに、ボクたちに敵対するんだぁ?」
「俊敏な野郎だ」
そう簡単にはいかない。
先ほどの歩みはどこへやら、奴の姿がふっと消える。
振り下ろした棒を戻しながら、俺は素早く後ろに目をやった。
なるほど、吐いた糸をコードのように戻したのか。
なかなかどうして、頭が回る。確かに、人間と戦争でもするに相応しいかも。
急に塾をさぼって家に帰りたくなる。
どうして、俺はこんな森の中で芋虫と戦っているのだろう。
きっと奴らと争う人間もそう考えているはずだ。
害虫、害獣。
こいつらと戦うほど、不利益なことはないだろう。
相手は国を持たぬ、動物なのだ。
「今日はお開きにして、また今度ってのはどうだ? 次は友好の印として、昆虫用のゼリーを持ってきてやるよ」
くるくると虚空で棒を回す俺は、やつれた顔でそう提案した。
知ってるかい。
人間とは、和解や妥協ができる生物なのだ!
「だーめ」
「お前、あれだろ。昆虫用のゼリーをなめてるだろ? あれは、そうだ……不味いかもな。俺も試しに食べたことある」
それも人間同士ならの話と、また一つ賢くなる。
小首を傾げるキャタピーに、俺はため息をついて首を振った。
こうやって少年は、一歩一歩成長するのだろうが、それも今日で終わりそうだ。
「来いよ。人間の怖さを教えてやる」
ここで死ぬわけにはいかない。
少年にもある闘争心が、軽い手招きとなって表れた。
俺の挑発に、キャタピーはいささかムっとして、巨大な目と思しき模様をしかめる。
そして、糸を吐く。
この距離だと、銃弾もかくやという速度だ。
身体を捻りながら、俺は棒を構えて突き進む。
背中を白い放物線が触れるが、無視だ。
駆け寄り、足元のキャタピーを蹴り上げる。
それより速く、奴は糸を更に引き戻していた。
黒い影が目前を横切り、次に奴の姿が明瞭となったのは木の幹でだ。
キャタピーでこんなに苦戦してたらピカチュウを前にした時速攻で感電死するぞwww
39 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:20:26.37 ID:5q427UiN0
木にひっつき、キャタピーはこちらを伺う。
俺は既に、走っていた。
奴の模様の淵を数えれるほど接近した刹那――木が騒々しく揺れる。
ばしん、と小気味いい音が幹と手にした棒で発せられたが、手ごたえは無かった。
作用反作用で二つになる棒が舞う中、キャタピーが飛びついてくる。
俺は空いた手で奴を振り払い、身を投げ出した。
地煙をあげて回転し、立ち上がる。
キャタピーは背後だ。
棒を振り薙ぎながら、俺は後方に向き直った。
ゴクリ・・・
41 リアルポケモン :2007/12/24(月) 21:27:54.11 ID:5q427UiN0
どうやら再度体当たりする予定だったようで、空飛ぶチョココロネを見事はたき落した。
「ぎゃん!」
相変わらず虫が発するとは思えぬ鳴き声で、奴は鳴く。
ボールのように飛び、地面で二度ほどバウンドしてからやっと止まった。
「虫にすら本気だす俺、かっこいい。何事にも本気に取り組もう」
「ボクに苦戦してるって事実は、どうなの?」
「…………」
どうなの?
身体を小刻みに震わして起き上がるキャタピーは、減らず口を叩くほどの元気はあるようだ。
「金輪際、ポケモンと触れるつもりはないから良いんだよ。非日常な存在は、これ以上ごめんだね」
俺は現実的なんだ。
キャタピーの言葉を鼻で笑って一蹴し、俺は指を突き出した。
そして自分の言葉を置き去りにするように駆ける。
渾身の力を両手にこめ、俺はキャタピーへ棒をたたきつけた。
今度は声はない。
ぐにゃりとした感触を残し、奴は静かになる。
結構な力のつもりだったのだが、緑の身体は潰れはしなかった。
体液という体液を全身から吐き出されても、それはそれで困るのだけど。
「いい夢を。――ポケモンも見るかどうかは知らないが」
棒を投げ捨て、俺は軽く吐息をついた。
奴の言うとおり、キャタピーごときに手こずるようでは、ポケモンマスターは弁護士になるよりも難しいだろう。
ここいらで、自分の力量が解って良かったのだ。
オーキドも涙をのんで納得するに違いない。
経験値は貰えなかったが、ささやかな満足感は得られた。
何気なく視線をめぐらす俺は、木々の間で蠢く何かを捉えた。
まさか、と俺は慄く。
この森にキャタピーは一匹しかいないと、誰が言ったか。
投げ捨てた棒に飛びつき、俺は影を見た木々の方向を睨み付ける。
殺してはいないが、報復してくる可能性はある。
ポケモンに、博愛精神や同族という概念があるかによるが。
俺はある方に賭けるね!
「彼……かどうかは知らないけど、こいつは気絶してるだけですよー? 俺、人間。ポケモン、だいすき」
平和を愛しているとアピールしつつ、向こうの出方を待つ。
もう一匹? 二匹?
どのような数でも、勝てる見込みがない。
どうして、ポケモンにはポケモンとジジィがほざくのかが解った気がする。
毒には毒を。
化け物にはモンスターを。
人間が適う相手じゃないんだ……。
今更ながら、俺はポケモンという存在に戦慄を覚えた。
木々の足元――下生えである草むらが揺れた。
俺は、その時を待つ。
「……!」
黒い影が、舗装された道に倒れこんだ。
黒いと形容したが、まさしくそれは黒だ。
漆黒を纏ったそれは、大人ほどの大きさがある。
「おいおい……」
まさしくそれが大人だと気づいたとき、俺は困惑した。
そして視覚に集中していたせいか、思い出したかのように異臭が鼻をつく。
まぎれもなく、彼から漂い――
「どうやったら、こうなるんだ……」
黒こげになっていた。
恐々、俺は彼を検分するべく覗き込んだ。
全身を焦がしたそいつは、元の服がどんな色をしていたかも解らない。
焼ききれた服から露になる皮膚すら、どす黒く染まっているのだ。
とりあえず白衣ではないようなので、オーキドじゃないみたいだ。
息絶えたと思われる男は、何かを握っていた。
身体と同じく黒の金属。
小型の銃だ。
それすらも焦げ、溶けた銃杷が手と融合していた。
「火事だったら、解るしな……」
俺は呟き、自分の考えを否定する。
どう考えても、こいつはポケモンと対峙したのだ。
しかもキャタピーより凶悪で、銃を持った人間よりも強い……。
気味が悪い。とても。
俺は薄ら寒いものを感じ、早々にここから立ち去ろうと考える。
――小さく光るものを見つけたのは、偶然だった。
男の首元の地面で、きらりと光るものを俺は摘みあげた。
「R……?」
アルファベットのRだ。
どこかで見たことあるが、思い出せない。
何かの団体だろうか。
俺はそのバッチを放り投げてはキャッチして弄び、もう一度男の身体を見下ろした。
こいつは俗に言う、死体、であるはずなのに恐怖を感じない。
自己分析してみると、それは恐怖を感じる対象が他にあるからだと脳は訴えた。
ポケモン……俺を殺すにはお釣りが出るほどの存在。
死体が、何だと言うのだろうか。
そこで、善良な市民として警察に通報しなければならないことに気づく。
このまま放置するのも忍びないし、流石に国家の機関と戦う勇気は無い。
携帯――これもまた親は早いと言う――は無いので、俺は来た道を戻ることにした。
家には当然、据え置きの電話がある。
塾にも一言置く必要があるだろう。
授業には間に合わない。
まったく、ポケモンとは不幸を運ぶ存在だ。
俺はまた嘆息して、よろよろと今度は幾分スローペースで歩き出した。
溜め息をつくと幸せが逃げると言うが、つかなかった人間が幸せになった事例を提示してからにして欲しいものだ。
どこまでも現実的な俺……サトシ。
童貞。
――ポケモンと出会う初体験は、墓まで持っていきたかった。
ちょっと休憩
文章量とか文体が見づらかったから申し訳ない
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|三|/ ̄`丶、 / ̄ゝl三〃
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「みんなもポケモン、ゲットじゃぞ」
59 リアルポケモン :2007/12/24(月) 22:28:31.88 ID:5q427UiN0
文章量とか文体が見づらかったから申し訳ない
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「みんなもポケモン、ゲットじゃぞ」
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ポケモン図鑑No.10 キャタピー
化け物。
山道や森を通過する人間を分別なく攻撃して、最後には捕食する。
基本的に全ての動きが遅いが、糸を使用して移動するなど頭を使ってくるので注意が必要である。
一匹、一匹にそれほどの戦闘力は無い。
しかしながら、それが群れを成すと脅威となる。
言語を介し、一人称がボクだが、はてさて……。
73 リアルポケモン :2007/12/24(月) 23:19:57.12 ID:5q427UiN0
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ポケモン図鑑No.10 キャタピー
化け物。
山道や森を通過する人間を分別なく攻撃して、最後には捕食する。
基本的に全ての動きが遅いが、糸を使用して移動するなど頭を使ってくるので注意が必要である。
一匹、一匹にそれほどの戦闘力は無い。
しかしながら、それが群れを成すと脅威となる。
言語を介し、一人称がボクだが、はてさて……。
そう動いたわけではないが、疲労をひどく感じる。
やはり、精神的なものが大きいのだろうか。
鎖を付けていない猛獣との戦いは、全身を鉛のようにした。
これから事情聴取があるのだと考えると、家に帰る足も自然に遅くなる。
映画やドラマ、漫画のように簡易に済むはずがないだろう。
いや、案外、またかということで済むのかもしれない。
そう思うと、俺はいかにポケモン離れした生活を過ごしていたのかを再認識した。
「わりと、幸せだったんですけどね……」
そのはずだ。
そうだろ、と俺は天を仰ぎ見、居るかもしれない神様に聞いてみた。
当然だが、俺は神の存在を信じていない。
ただの慰めだ。
神を信じていない不出来な者への罰か。
天から応えが返ってきた。
青い空全体が明滅し、俺を取り巻く世界がストロボの白黒になる。
遅れて、轟音。
空を妬き、青白い光が不規則な軌跡を描いて地に落ちる。
何かが弾ける音がして、同時に森が悲鳴をあげた。
晴れなのに、雷だ。
お天気雨もあるのだから、そうおかしくはないが、今の状況だと悪い予感がしかしない。
十中八九、ポケモンのせいだろう。
人間が人工的に作り出すことも可能だが、その規模はそれを凌駕している。
落ちたのは、そう遠くない。
そして、帰り道の方角だ。
関わりたくない、と眩暈がするのと同じくして、今のがカミナリという技なのを思い出した。
朝のニュースは言う。
火、水、雷など、自然現象を扱うポケモンには特に近づくな。
昼のニュースは言う。
そのポケモンによって、討伐しようとした特殊部隊が皆殺しにされた。
夜のニュースは言う。
そいつにあったら、死を覚悟しろ。
……ニュースとニャースって似てるよね。
俺は、猫派だ。
今までポケモンマスターになるのは何とか逃れたが、今回の――絶対的な死、というのは免れないかもしれない。
ポケモンを死神と称する、どこかの評論家をニュースで見た。
それは、あながち誇張ではないのかもしれない。
のしたキャタピーと比較し、彼、あるいは彼女はどれほど強いのだろうか。
また明滅。
澄み切った青を強引に切り裂き、じぐざくな光が急降下する。
森の木々は蹂躙され、破砕されているのがここからでも解った。
小さく聞こえるパチパチという音は、おそらく火が付いたのだろう。
燃え広がらなければ、良いのだが。
木々の合間から、のろしの如く煙が立ち昇る。
それを見つけた誰かが駆けつけてくれればと思うが、直ぐに危険なことだと覚る。
相手はモンスターだ。
一筋縄では、という言葉があるが、それ以上のことになるだろう。
マサラタウンに、こいつと戦える者が居たらありがたいが、それは望めない。
俺の後方で絶息する男は、銃を持っていたのだ。
男の子の憧れ、戦車や戦闘機。
発展する兵器の中で、銃というのは未だ優れている。
離れた安全圏から撃ち出し、小さな弾丸ながら相手を殺傷することができる。
まさに凶器。
――そう、銃は優れている。
だが、男は死んだ。
ならば、その安全圏――遠距離から発砲する場所すら、危険だということか。
至近距離でニアミスした可能性もあるけどね。
ならば、人間に勝てる見込みなどあるまい。
雷の電圧は、1〜10億ボルトと言われている。
これを生身で防げたら、そいつにも化け物のレッテルを与えてやる。
そんな装備の存在を聞かないし、出来ることならお目にかからない人生を送りたい。
だが――
「何とかしなきゃな……」
マサラタウンの住人は、気の良い奴ばかりだ。
田舎であるのに、近所には勿論、外からの人間に対しても閉鎖的なイメージをおくびにも出さない。
悪くない町だ。
先の男に対しては特に感慨は沸かなかったが、知った顔が黒こげになれば別だ。
博愛精神は持ってない。
現実主義の俺に持っているのは、百人の他人よりも、大切な一人の精神だ。
やるしかあるまい。
「先立つ不幸を……」
あまりに、短い人生だった。
皮肉げに口を歪めて、俺は歩き出す。
手には、キャタピー戦で活躍した木の棒だ。
二つに折れ、先は鋭くなっている。
叩くよりも、突くのに有利になったはずだ。
短くなったリーチはこの際、気にしない。
数十センチの差など、ポケモンには無きに等しいのだろうから。
木々が爆散して、破片を周囲にばら撒くのを耳と振動で感じる。
鼓膜をつんざく音は、次第に大きくなった。
地面も衝撃に揺れ、いかにその威力が凄まじいのかを俺に教えた。
当たってでは解るまい。
当たれば即、死ぬのだ。
powerd by 楽市360
携帯小説並みにたちが悪い
シャナとかこんな感じだ
せめてコラッタにすべきだったな
親が子供にどれだけの物を与えているか、こいつは
想像すら出来ないんだと思ったら萎えた。
日本語でおk
気になるな………
ググってみろよ
文章力が中途半端過ぎ。腕が無いなら変にこだわった文にしなけりゃいいのに
文章がどうのこうの言ってる奴は書く媒体とかを考慮してなさすぎww
ここはそんなのきにするところじゃねぇだろ。馬鹿じゃねえの。